2022年春アニメ 最終評価

15作品完走(+夏への継続1本)

評価

SSS:(該当なし)

SS :ダンス・ダンス・ダンスール かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-  

S+:まちカドまぞく 2丁目 BIRDIE WING -Golf Girls' Story- パリピ孔明 ヒーラー・ガール 

S:ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第2期 SPY×FAMILY 恋は世界征服のあとで であいもん くノ一ツバキの胸の内

A:古見さんは、コミュ症です。 2期 じゃんたま PONG☆ 

B:CUE! RPG不動産 

C:(該当なし)

 

SS

ダンス・ダンス・ダンスール

作画・演出・脚本、全てにおいて一級品の傑作。

中でも演出は圧巻の一言。長年シャフトを中心に活躍されてきた大谷肇さんを招集して作り上げられた要所要所のバレエシーンは、映像と音楽とが完璧な噛み合いを見せていて、息を呑むほどの迫力だった。こと5話の舞台は必見の出来。

脚本に目を移せば、物語を通じて一貫したキャラクターの深い描きと残酷なほど真っ直ぐな才能の描きに心を鷲掴みにされ、終盤白鳥の湖と重なる3人の関係性には胸が苦しくなるほどに引き込まれ…そのキャラ造形の深さと物語としての完成度の高さには終始驚かされるばかりだった。尺は11話しかなく、まだ全体の物語としては序章も良いところなのに、それでもここまで魅力的な物語を紡ぐことができる今作のポテンシャルの凄まじさよ。

惜しむらくは元々の知名度の低さ+ディズニープラス独占のせいで決して多くの人には見てもらえなかったことと、後追いで見るハードルが異常に高いこと。多分この先見る人も少なく、埋もれていくような作品になるんだろうが、だからこそ数少ない今作を見た立場として、出来る限りの賛辞を送りたい。本当に素晴らしい作品だった。紛れもなく傑作だった。やれるものなら続編もやってくれ。本当に。

 

かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-

原作としても一区切りの部分で綺麗に3期分の物語を締めてくれた、という脚本的な良さがまず一つ。それから原作通りに拘ることなく、アニメならではの表現に果敢に挑戦できていたことがもう一つ。この2点で大きく評価できる作品だった。

特に後者に関しては様々なアイデアを駆使して、いかに視聴者を楽しませるか、アニメとして面白くするかの部分に全力投球出来ていたのが非常に良かった。画質を昔風にしたり、謎に3D回り込みのカットを入れてみたり、ゆっくり実況風の画面を突然入れ込んでみたり…そういう良い意味でふざけた、バリエーション豊かな演出が沢山見られて、視聴者側としてもとても楽しく視聴できた。

にしても1期2期3期とずっと面白くて、本当に理想的なアニメ化が為された作品だったなぁと。原作の続きの部分は多少面白さが落ちるみたいだけど、それでも今度やる続編にも期待はしてます。この制作陣なら良いアニメ作ってくれるでしょう、きっと。

 

S+

まちカドまぞく 2丁目

シャミ桃の関係性の進展を1クールかけてじっくり描いた1期と違って、2期は前半で物語に一区切りついて、後半はシャミ桃の関係性が確立した後のお話になったから、関係性が成熟していく過程を楽しみたい百合オタクとしては多少物足りない感はあった。あとは余った尺に原作の小ネタをぶち込みすぎていて、ちょっと本筋から外れたおふざけが多かった気はしないでもない。

とはいえ不満はそれくらいで、基本的にはとても楽しめた作品だった。キャラの個性の強さ、関係性の描きの良さ、ギャグセンス、テンポの良さ…日常系にとって必要な要素を全て押さえたうえで、さらにストーリー性まで入れ込んでしまえる今作の、日常系としては傑出した完成度の高さを改めて実感する2期だった。

 

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-

紛れもなく春アニメ1のダークホース。とんでもB級ゴルフアニメかと思いきや、その枠に留まることなく、女×女のバディものとして、ライバル百合ものとして、そして王道スポコンアニメとしてこれでもかと熱い物語を見せてくれる最高のアニメーションだった。

何よりもイヴと葵の関係性が最高。典型的なケンカップルながら、なかなか直接会えない、直接対決できないという焦らしが、お互いの感情の矢印を醸成させる構図を作り出せていたところが秀逸だった。お互いがお互いを特別視して常に意識し合う、理想の百合関係が常に作品の根底にあって、面白さを下支えしてくれていた。

物語は何でもありの馬鹿らしさはありつつも、単なる馬鹿アニメだと安易に腐せないくらいには構成がきちんと練られていて、感情移入もしやすかった。裏ゴルフ編の最終決戦は特に構成が丁寧で、戦前にはイヴが戦う理由をじっくり描き、戦いの中では敵キャラも丁寧に立て、展開とキャラクターの描きの両面から熱い物語を作り上げられていたのは見事と言うほかない。

終盤は日本での学園編になったけど、こちらはこちらでさらに百合が加速していて言うことなし。来年の2クール目も楽しみにお待ちしております。

 

パリピ孔明

孔明が現世に転生して音楽プロデュースをする”っていう設定と1話の構成の上手さで、既に勝利が約束されていた感はある。その後なかなか1話を超える話数が出てこなくて停滞感があったのは惜しいが、最終回は大団円で纏め上げてくれて良かった。

歌や楽曲にも力を入れていて、英子の歌の才能や魅力に説得力を持たせられていたのも評価点。歌やラップなど、漫画の台詞だけでは上手く伝えられない部分を、音響面から補強できるのはアニメならではの利点だし、そこにしっかり力を入れてくれたのが今作の成功の大きな要因になったのは間違いないのかなと。

1つ気になったのは8話のアニオリ。アニオリを挟むこと自体は否定しない(むしろ個人的には肯定派)なんだけど、8話のそれは本当に原作の話の途中に無理やり追加の話をねじ込んだだけでしかなくて、描写の補完としても、カタルシスに繋げるための溜め回としても機能していなかったのが残念だった。12話でキリよく終わらせるために色々と構成頑張ったんだとは思うんだけど、これなら完全アニオリでストーリーと何の関係もない話を1話足すくらいで良かったんじゃないかなぁと。

不評だったKABE回も、結局は原作ではサクッと片付けていた部分を無理やり引き延ばした結果不満が表出しただけであって、本当なら11話、ないし10話構成くらいで駆け抜けられると一番今作の良さが出たと思うんだけど…そこら辺は簡単に融通を効かせられる部分でもないんだろうし、難しいですね。

 

ヒーラー・ガール

1話2話を見た時は、”ヒーリングを題材にした青春成長物語として、傑作の域にまで辿り着けるのでは?”と思ったけど、さすがにそこまでではなく…ただ間違いなく良い作品ではあった。

ヒーリングというファンタジー極まりない設定を、現代医療と最後まで破綻なく共存させ続けたのがまずもって凄い。普通にやったらまず間違いなく、ヒーリングだけでいいじゃんってなるところを、そうならないように丁寧に立ち位置を定めて、設定を作り込んで、共存する姿を描き切ったのは評価できる。

それと全12話何かしらの形で歌唱シーンを入れ続けた挑戦的な構成も称えたい。時には見せ場の演出として、また時にはギャグとして威力を発揮しながら、ただ雑に挿入されているのではなくちゃんと今作の魅力の片翼を担う要素として確立していたところが素晴らしかった。ミュージカルを描いたTVアニメはこれまで少なかったが、今作が一つの試金石になってくれればと思う(まあ商業的には成功していないっぽいのが微妙なところだが)。

単発回多めの構成だったからこそ、飛び抜けて強い回がなかったのは一つ惜しいところ。多分一番可能性があったのはメイドの葵さん回の8話なんだけど、あの回のラストを強引にハッピーエンドにせずに、思い切ってシリアスに振り切れていたらどれほどの良回になっていたか…と思うとつくづく惜しい。

 

S

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第2期

とことんファン向けのアニメだったなと。ユニット、新キャラの加入、リアルライブとの重ね合わせ。どれも既存のコンテンツファンにとってはアニメで描かれることが嘱望されていたことであり、それをファンに喜んでもらえるような形でアニメ化できていたという点に関しては本当に素晴らしい作品だったと思う。一方で原作含め、コンテンツを深く知るファンではない立場からすれば、1期に比べて物足りなさも多い2期だった。

ユニット回では”結成される”という結果ありきで話が進められているように感じる場面も多かったし、ランジュも一旦は同好会と違う道を行くライバルポジションとして配置しておきながら、結局設定の後出しによって同好会加入の方向に持って行ったのはいささか強引だったようにも思う。

キャラ掘り下げ回は1期同様素晴らしかったが、全体を通して見ると個々の回の質は1期に比べて幾分か劣っていたし、6話や11話のような分かりやすい神回も作り出せていなかった。明確な目標を設定していなかったこともあり、終盤は物語が停滞気味で、若干尺を持て余していた感もある。

総じて”出来は良いけど1期には敵わない2期”という印象。ファンには喜んでもらえている以上コンテンツのアニメ化としては間違いなく成功だと思うし、ファン向けアニメとしては十二分に評価できるけれど、1つのアニメとして見るには少し物足りない作品ではあった。

 

SPY×FAMILY

・アニオリを足すことはあっても原作を削ることはしない

・原作にとことん忠実でアニメならではの創意工夫に乏しい

の2点において物足りない作品だった。アニメならではの表現に果敢に挑戦していたかぐや様3期とはあまりに対極。

作画面ではアニオリ回以外、作画も演出も攻めたものは殆ど見られず、淡々としたアニメ化で制作会社のネームバリューほどの映像的な快楽はなかなか得られなかった。アニオリ回ではそれなりに凄い作画も見られたのだが、そのアニオリ回は原作の中でも割とどうでもいい部類のエピソードを膨らませたものだから、今度は脚本面での満足度が低いというジレンマ。

構成面に目を移せば、1クールを通して切りの良いところまで終わらせようとか、ちゃんと全体として起承転結を作ろうとか、そういう意識が微塵もなくて、ただ原作を長期間にわたってアニメにし続けることしか考えていないような構成が為されていたのが残念だった。最終回なんて、1クール目の最終回で今更キャラクター紹介をし始めるとかいう意味不明な脚本になっていたし…そこら辺は原作通りに囚われずにもう少し工夫しようよ。

総じて原作が面白いが故に原作に縛られ、アニメとしての最善を尽くせず、柔軟性を欠いたアニメ化だったという印象。

ただこれでも一般層には十分受けてしまうんですよね。だからこそ製作側としては冒険するリスクを背負う必要がないわけで。結構なお金が動いている以上、こういう守りに入ったアニメ化になっちゃうのもしょうがないのかなぁ…と半ば諦め加減だったりはする。

 

恋は世界征服のあとで

ブコメの”コメディ”の部分が強くて1クール飽きずに楽しめた。サブキャラの小出しも上手く嵌っていた印象。特に王女シリーズは、中の人補正も含めて個性的なキャラクター揃いで、構成次第では簡単にマンネリ化しかねない今作の設定にあって新たな笑いを生み出すのに一役買っていた。

不動とデス美さんの関係自体はワンパターンなものだったが、どちらも異様に個性が強くて笑いのネタ自体には事欠かなかったから、飽きることもなく、むしろ鉄板ネタをひたすら楽しんでいるような感覚で安定して楽しめた気がする。

 

であいもん

シリアスの作り方や解決の仕方が合わない回が多くて全体としてはいまいち楽しみ切れなかったけれど、和と一果の疑似家族的な関係性を描いた回に関しては例外なく良かったのでそこで何とか評価できるかなぁという感じ。

そもそも論として、アニメに作画や演出の良さを求めがちな自分にとって、”作画や演出は最低限でもアニメとして全然成立してしまう”、今作みたいな作品は元々相性が悪かったりはする。(それで大して期待もしていなかったわけで)

 

くノ一ツバキの胸の内

男関連の話題が出てこない回はキャラの可愛い優秀な日常系作品、男関連の話題が出てくると微妙寄りのギャグアニメ…という印象。くノ一たちのワチャワチャ日常回にはいくつか素晴らしいものがあっただけに、もう少しシリアスに振った話とか、良い話として纏め上げる回が多くても良かったと思うんだけど、そういう方向の話はせずにただただしょうもない話に終始したのは少し残念だった。

アニメの出来自体は素晴らしかったので(終盤は結構リソースギリギリでやりくりしていたみたいだが)、微妙なのは単純に原作が悪いということで…。というかなんでこの作品CloverWorksがアニメ化したんだ(今更)。

一応戦闘シーンのクオリティは(OP映像含め)しっかり高いものが出てきていたのでそこは満足。

 

A

古見さんは、コミュ症です。 2期

古見さんと普通の女子二人が平和に修学旅行を楽しむ回(21話)だけめちゃくちゃ良くて、あとは1期同様ほどよく安定したギャグアニメだった。別に男の新キャラは要らなかったかなぁという気もするが…まあそれ言ったら古見さんいつまで経っても友達100人作れないのでしょうがない。

作画の良さも今作の魅力の1つだったが、終盤明らかに作画微妙な回をお出ししてしまっていたのは少し残念。とはいえその分、最終回ではこれでもかとはっちゃけた作画を披露してくれていて満足度は高かった。

 

じゃんたま PONG☆

中間評価記事で書いたこと以上に書くことはないかもしれない。ショートアニメかくあるべし、とは思う。

 

B

CUE!

ツッコミどころはいくらでもあるけど、一番問題だったのは、”なんでこいつらこんなに売れてんだ…?”ってなる場面が多かったこと。やっぱり2クールで16人のキャラを掘り下げるのは無理があって、尺が足りないから売れるまでの過程を描けない、結果売れている姿に何の根拠も感じられない、っていう事態が頻発していたのはちょっと苦しかった。

別に2クール分の尺なんて駆け出しとして頑張ってます程度の描写で使い切れば良いんですよね。別に成功した後の描写なんて、最終回に数年後・・・とかそういうノリで描けばいいわけで。なんで尺がない中であんなに無茶な売れさせ方しちゃったのかなぁと…どうせ中の人だって、まだまだ売れていると言うには程遠い人が大半なんだから(おい)

一応まともに声優業やってる回は最後までしっかりしてたので、そこだけは褒めておきたい。最終回もまともに現実と向き合った上で希望のある終わり方を出来ていて良かった。

 

 

RPG不動産

キャラ弱い可愛くないギャグ面白くない関係性弱い会話センス無しで、何を評価するかと言われれば何も評価しないけど、ただ最後のシリアス展開だけは面白かった。クソアニメとして()

相性の問題もあるとは思うけど、正直日常系としての強さが何も見出せなくて、一体なぜこれがアニメ化にまで漕ぎつけられたんだ…と思ってしまうくらいではある。良かったところは強いて言うなら…って言おうとしたけど強いても何も出てこないなこれ。

どうしようもなく酷いアニメではなかったというその1点だけでB評価にはしてあるけど、実質的にはC評価でもいいくらいなのかもしれない。

 

 

総括

上位作品から中堅どころまで、新規も続編も充実のラインナップ。豊作期と言っていいでしょう。オリジナルアニメは全体的に小粒だったけど、その中でもバーディーウイングにヒーラー・ガールと、2本の独創的な作品が出てきてくれたし、期待の続編組も概ね期待通り、何ならそれ以上の面白さを発揮してくれていて良かった。

年が年ならこのクールが一番豊作だった、で結論付けられそうなところだけど、今年に関しては冬も夏も、何ならおそらく秋も同レベル以上の強さがありそうなので凄い年だなと。これだけ粒ぞろいなのはおそらく10年に1度レベルだろうし、そんな豊作年が時間を割と自由に使える大学生の内に来てくれたことには嬉しさしかない。リアルタイムで面白いアニメを追えることの喜びをかみしめながら日々を送るこの頃です。