2022年上半期 TVアニメ作画10選

選出に当たっての縛りはなし。純粋に良いと思ったものを10個選出。出典も兼ねてsakugabooruのリンクを併記。

 

1:「明日ちゃんのセーラー服」5話より 原画:河本有聖
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5話の河本さん担当箇所の後半部分。開幕ハンカチで手を拭くシーンも丁寧な造形と芝居が際立つ良作画だが、何より素晴らしいのはその後の小路の動き。後ろに体重を乗せて流れのままに下がっていく動き出しと、外に出てからの躍動感ある髪の毛の描写、跳ねるようなステップの作画が絶品。

目線が左右に移るタイミングを、小路自身の上下方向の動きとリンクさせることで、情報量の多さの割にまとまりのある作画に仕上がっているところに巧さがある。大胆な芝居付けに、確かな技術と実力の見える珠玉のシークエンス。

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河本さんは「サイダーガール ''melt'' short movie」(MV) でキャラクターデザイン等を務められた他、「ヤマノススメ Next Summit」ではOPの作画監督やキービジュアルなどを担当されるなど、近年目覚ましい活躍を見せつつある要注目のアニメーター。

 

2:「明日ちゃんのセーラー服」7話より 原画:大島塔也
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何故か全部手書きで描かれているピアノの鍵盤、がスライドするところから始まる。意味が分からない。さらに入射光の作画、蛇森さんの噛みしめる唇の質感の表現で畳みかけ、とどめに音楽室に向かってただ兎原さんが歩いてくるだけの、ただそれだけのシーンにぶち込まれる超ハイレベルな背景動画。

他のシーンとは一線を画す質感で描かれたこのシーンは、その突拍子もない、過剰とすら思える作画力故に脳裏に焼き付き、心から離れない。木崎さんの演奏を聞いて蛇森さんが、そして小路が受けた衝撃を視聴者に伝えるのにこれ以上効果的な表現はないでしょう。

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3:「明日ちゃんのセーラー服」7話より 原画:??
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滑らかで実写的な表現が目立ったこの回にあって、唯一オバケ作画が大胆に用いられたシーン。兎原さんのからかうような表情や手の動きが良いし、反論する木崎さんの動きは躍動感がありつつも可愛らしい。担当された方のお名前が気になる。

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4:「その着せ替え人形は恋をする」8話より 原画:𠮷原達矢
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劇中アニメとは思えない出色の戦闘アニメーション。エフェクト、タイミング、レイアウト、全てが過不足ない密度で描かれていて、ド派手でありながらも煩雑としない、スタイリッシュなアクションに仕上がっている。

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5:「その着せ替え人形は恋をする」8話より 原画:新沼拓也(推測)
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冒頭、肩の揺れや鞄の揺らし方に二人の性格の違いが滲み出る。終始丁寧な重心移動の表現、ポテトを投げる時のリアルな身体の動きに拘りを感じる。小林恵祐さんを筆頭に、CloverWorks梅原班にはリアル調の作画が抜群に上手いアニメーターさんが揃っているが、その中でも新沼さんは特に秀でた才能を見せてくれている印象。

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6:「プリンセスコネクトRe:Dive Season 2」4話より 原画:簑島綾香
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日本の深夜アニメ史上稀に見る、超豪華クレジットが見られた作画回から選出。

山本健、榎戸駿、中山竜、吉原達矢山下清悟、中山直哉、ちな、土上いつき、森匡三
などなど、名の知れたアニメーターさんが勢揃い(敬称略)

どうしてもアクションシーンに目が行きがちな回だが、何気ない日常シーンで光る作画を披露して、全体のクオリティを更なる高みへ引き上げていたのは紛れもなく簑島さんのお仕事の数々。

今回取り上げたカットは見上げ角でキャラの顔を描くのがただでさえ難しいところ、さらに画面に映る8人全員の顔を、会話内容に合わせて相互に連動させながら動かしているところに凄みがある。

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こちらの担当シーン*1もキャラクターの表情や動きのコミカルさが楽しい。

 

7:「王様ランキング」21話より 原画:御所園翔太
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今作21話のアクションカットはどれも素晴らしいが、1つ挙げるとするなら同話で絵コンテ・演出も務められた御所園さんの担当パートかなと。Blenderで背景の構造物とキャラのあたりを設計、それを元に全てを作画で描き起こして作り出された珠玉の戦闘シーン。CGと手描きの技術を合わせるからこそ生み出せる、臨場感と疾走感に満ちたアクションに思わず胸が高鳴る。

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8:「平家物語」9話より 原画:小磯沙矢香
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直前の藤本航己さんの担当シーン*2も印象深いが、個人的にはこちらを挙げたい。平家物語屈指の名シーン、敦盛の最期を情感たっぷりに描き出す表情作画が絶品。竹下良平さんのコンテも武士の世の無情を儚くも美しく映し出す。

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大写しの青空をバックに、涙を振り払って立ち去るびわのカットもまた印象的。演出と作画、双方の仕事が見事に噛み合った珠玉のアニメーション。

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9:「ONE PIECE」1015話より 原画:森佳祐
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石谷恵さんの演出回から。何気ない仕草一つ一つが丁寧に描き出されていて、溜め詰めのはっきりとしたメリハリある作画が楽しい。

特に前半、顔の輪郭に柔軟性を持たせたり、型に嵌らない豊かな表情付けをしたりすることによって、ヤマトの活発な可愛さが引き出されている。リアルで正確な芝居づけを基礎としながら、アニメらしい”省略”や”嘘の効いた表現ができているところに魅力を感じる。

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森さんは東映アニメーションの若きエース。東映作品のみならず、他社作品にも度々顔を出す。1人でコンテから作画まで務められた「風のゆくえ」(MV) は必見。

 

10:「ヒーラー・ガール」OPより 原画:シュウ浩嵩
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口パクの精度の高さ、歌詞に合わせた芝居表現、豊かな表情、浮遊感と風になびく髪の毛の作画…全てにおいて超一級品の歌唱アニメーション。特に「優しい風が吹いて~」の”ふ”の音に合わせた息を吹きかける芝居はセンスの塊。

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↓参考

 

総括

冬クールがとんでもない作画期だったこともあり、冬アニメ中心の選出に。特に『明日ちゃんのセーラー服、『その着せ替え人形は恋をする』のCloverWorks元請け2作品は抜けた存在感を放っていた。加えて『プリンセスコネクト!Re:Dive Season2』4話、『王様ランキング』21話と衝撃的なアクション作画回が2つも誕生。話題に事欠かない充実のクールだったことは間違いない。

春は冬に比べると目立った作画の少なかった印象だが、その中でも『ヒーラー・ガール』が計5回の一人原画回を披露したほか、『SPY×FAMILY』でも素晴らしいアクションが見られるなど、随所に印象的な作画が見られた。

下半期は秋クールにとてつもない作画アニメが集中して、さながら怪獣大戦争のような様相を呈しているが、さてはて10選に絞り込めるものか、そもそも夏アニメが入り込む余地があるのかどうか…色々と楽しみ。

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