2022年夏アニメ 最終評価

17作品完走。

評価

SSS:(該当なし)

SS :メイドインアビス 烈日の黄金郷 リコリス・リコイル 

S+:サマータイムレンダ よふかしのうた 連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ シャインポスト 

S:Engage Kiss Extreme Hearts 神クズ☆アイドル シャドーハウス 2nd Season 

A:異世界薬局 邪神ちゃんドロップキックX 

B:てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!! ラブライブ!スーパースター!! 第2期 プリマドール ユーレイデコ RWBY 氷雪帝国 

C:(該当なし)

 

 

SS 

メイドインアビス 烈日の黄金郷 

非の打ちどころのない傑作。

純粋なアニメの出来は間違いなく今期一。原作の世界観を膨らませる背景美術、漫画を補完するアクション作画、度し難さに拍車をかける容赦のない表現と、それに負けない迫真の声優陣の演技…アニメに関わるありとあらゆるセクションが、原作の持つポテンシャルを存分に引き出していた。

1期劇場版と放送してきて、主要なキャラクターの掘り下げが概ね済んでいる(=既存のキャラだけでドラマを作るのが難しい)中、ガンジャ隊という新規のキャラクター達を通じてもう1つの冒険譚を作り上げられていたのも大きい。リコたちと同じようにアビスの底を目指しながら、途中で冒険を諦めざるを得なかった者たちによって紡がれる物語、その結末の度し難さと神秘性には強く心を揺さぶられた。全てが終わり何もかもが消滅した後、彼らの意思を受け継ぐ者たちによって、また新たな冒険の一歩が踏み出されるラストシーンも印象的。

あまりに独創的で先の読めないストーリー、未知の生態系や遺物の設定にも魅せられ、食い入るように画面を見つめていたらあっという間に24分が経過する、そんな視聴体験が1クール持続する、本当に稀有な作品だった。

続編は当分先になるかもしれないけど、それでもこの続きもアニメで見られると信じたい。いつまでも待ってるから。絶対にやってくれ。

 

リコリス・リコイル

まずもって何よりも、リアルタイムで追っていて本当に楽しい作品だった。毎週何回も見返しては、他の人の感想・考察を漁って、5chに張り付き、ファンアートを眺め、公式からのコンテンツ供給をありがたく摂取する…そんな滅多に味わえない幸せな日々を1クール送ることができたという、それだけでも評価したくなってしまう。

客観的なところは前に書いた文章でも大体触れたけど*1、やはり序盤のつかみとキャラ造形の良さが一番大きかったかなと。特にちさたきの関係性を描くことに特化して、”百合メリーゴーラウンド”という1つの盛り上がりにまで繋げた1~3話の構成は見事と言うほかない。設定開示のタイミングもよく考えられていて、毎話少しずつ情報を出しながら、新たに謎を増やしながら、序盤から終盤まで”考察する余地”を生み出し続けられていたところに、誰も先の展開を知らないオリアニとしての今作の強さがあったと思う。

終盤(10話以降)こそ大味な展開になって評価を落としたが、最終回はおおむね綺麗に纏まっていて読後感は良く、そこまで致命的な失速にはならなかった印象。これだけ売れたら続編も間違いなくやるだろうし(かといって2期がやれるほどのポテンシャルはこの作品には残っていないと思うので)、是非とも劇場版でハワイ編、お待ちしております。

 

S+

サマータイムレンダ 

良質なサスペンス・ミステリーものだった1クール目から一転、2クール目は少年漫画らしいバトルものへと変貌したが、それでも大きく評価を落とすことがなかったのが今作の強さ。特にシリーズ構成の瀬古さんのお仕事は見事で、全13巻とそれなりに量のある原作を全25話のアニメに綺麗に落とし込み、2クールの間ずっと一定の面白さと引きの強さを保ち続けた構成の巧さは流石の一言だった。

映像面も高いレベルで安定していた上に、要所の回ではさらに一段階上のレベルの作画を見せてくれるなど、満足度の高い画面作りができていたと感じる。特に西谷泰史さん一人作監の15話は出色の出来。

シデの思想が浅はかすぎてラスボスにしては小物に感じられたことと、ラブコメ要素が全体的に取って付けたようでインパクトに欠けていたのは気になるところだが、ただでさえ畳むのが難しいループもの作品で綺麗な最終回を迎えられている点、アニメーションとしてのクオリティが終始素晴らしかった点、何よりサスペンス・ミステリーものとしての1クール目の圧倒的な面白さを加味してこの位置に。

 

よふかしのうた

作風として会話劇が中心であること、監督の板村智幸さんが長らくシャフトで監督を務められた方だということ、そして色彩設計の滝沢いづみさんが00年代中盤以降のシャフト作品のほとんどで色彩設計等を担当された方だということもあり、ライデンフィルム制作の作品でありながら往年のシャフトの雰囲気を色濃く感じられる、シャフト演出好きにはたまらない作品に仕上がっていた。本家シャフトがボロボロになった今、他社制作でありながら良質なシャフト演出を享受できる新規のTVアニメが現れてくれたという、その一点だけでも評価できてしまう。

特にナズナ以外の吸血鬼が登場して以降の演出は素晴らしかった。状況に応じたダイナミックな色彩の使い分け、寄り引きを絶妙に使い分けるコンテの上手さが、シリアス成分が増すにつれて大きくなる感情の揺れを、映像面から見事に補強していた。長尺の会話でも飽きさせず、視聴者を緊迫感の渦に引き込み続ける技術はさすがの一言。

ナズナと夜守の物語としては何も進んでいないようで、最終回に二人の関係性が逆転する構図を見せてくれたのが良かった。ナズナに引っ張られて夜の世界に飛び込んだ夜守が、今度はナズナを引っ張っていくんだと感じさせてくれるラストは印象的。

序盤中盤こそ、起伏が少なく退屈に感じる話数もあったが、終盤の素晴らしさもあって総合的にはかなり満足度は高い。物語としてはこれからが本番感もあるし、続編にも期待したいところ。

 

連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ

まず一番に、春藤佳奈さんのお仕事が素晴らしかった。脚本・絵コンテを務められた6話、絵コンテ・演出を務められた11話は、どちらも年間話数10選級の良回。言葉で語らない演出が見事で、決して潤沢とは言えないリソースを上手くやりくりしながら、見せ場をきっちり”見せ場として魅せる”技術の高さが光っていた。

全体としてはアサルトリリィ同様、多キャラを上手く捌きながら、満足感のある物語を紡ぎ出す佐伯監督のバランス感覚が光っていた印象。最終回まで名前のテロップを出し続ける親切さ、1話から全員のキャラを出さずに3人の掘り下げのみに留める分かりやすさ、ワールドツアーという縦軸に”故郷”というバックボーンを組み合わせることでスムーズに各キャラの掘り下げを実現する構成、カップリングを意識することで1話で2人のキャラを並行して掘り下げる話の組み立てなど、アニメとしての作りの上手さが随所に見られた。

話の内容自体に突き抜けた良さがあるわけではなく、作画クオリティもまずまずといったところだが、前述の演出の良さと構成の出来を買ってのこの評価。最終回のライブも素晴らしかったし、本当に良い作品だったと、終わってから今一度実感するようなアニメだった。

 

シャインポスト

前半6話が本当に素晴らしかっただけに、後半の展開に惜しさが残る作品となった。

結局春が1人でアイドルをやれば全てが解決してしまうのが問題だった。7話以降、春が他のメンバーを傷つけまいと実力を隠していたことをきっかけに軋轢が生じていたが、そもそもシャインポストを目指すきっかけとなった”蛍”がソロアイドルである以上、実力のある春がグループに拘る必要はどこにもなかったはず。なのにそれでもグループで活動し続けようと思えるだけの動機が、作中では十分に描かれていなかったように感じた。だから春がソロアイドルの道を選ばなかったことに対して違和感が拭いきれず…。

結局この違和感が最後まで尾を引いて、評価を下げる結果となった。

返す返すも、前半6話は素晴らしかった。2話で売れるべく努力するアイドルたちの姿を丁寧に描いて”応援したくなるアイドル像”を作り出せていたのも良かったし、トッカさんとの関係性でファンとアイドルの相互作用を描いた4話、隠れていた才能の開花で視聴者を引き込む6話はいずれも今期有数のエピソードだった。及川監督らしいテンポの良いギャグや、個性的なサブキャラたちも印象的で、特に”ふむ姉さん”は分かりやすいキャラ付けと良い意味で安直なネーミングも相まって、少ない出番ながら強く印象に残る良キャラに仕上がっていたと思う。

作画も非常にハイクオリティで、こと手描きダンス作画に関しては今の日本のアニメ制作会社でこれ以上のものを出せるところはないんじゃないかと思わされるほど。1話冒頭の蛍のライブシーンはアニメ史に残すべき圧巻のクオリティだった。

評価を下げたと上で書いたが、裏を返せば評価を下げてもこの位置をキープできたということ。それくらいに褒めたいところの沢山ある、後半の失速を込みにしても新規オリジナルアイドルアニメとしては久方ぶりの良作だったと思う。ソシャゲも楽しみにしております。

 

S  

Engage Kiss

序盤は完全に駄作コースだったが、中盤以降徐々に面白くなり、妹との直接対決に突入した終盤でさらに加速。拗れたキャラクター同士の面倒くさい関係性がやたらと良くて、妹とキサラのヤンデレ二人に挟まれながら、元カノに詰め寄られるクズ男っぷり全開なラストに今作の魅力が詰まっていた。

とはいえ結構文句を言いたいところもあり。

設定はよく作り込まれていたが、1クールの短い尺に対しては情報量が多すぎて、少々持て余していた印象。伏線を丁寧に張って回収するというよりは、後出しで情報をどんどん追加して整合性を取っていくタイプの脚本だったこともあり、置いてきぼりにされていると感じる場面もままあった。主要なキャラクターは十分魅力的だっただけに、もっとキャラクターに近い部分で話を展開して欲しかった部分はある。

特に序盤から中盤にかけては、日常回を増やすなり、描きたいテーマを絞るなりして、もう少し三角関係(中盤以降は四角関係?)の部分に尺を割いても良かったのかなと。何の因縁もない悪魔と戦うだけのパートとか、サブキャラの裏切り話とか、街のあれこれがどうこうとか、制作側がやりたかったのは伝わってくるけど、1クールのオリジナルアニメとしてはそこを削ってでも本筋をより濃く、密に描くべきだったと思う。

作画も終始素晴らしく、1クールアニメとしても十分評価のできる作品だったが、設定の作り込みといい、キャラの多さといい、話の内容の詰め込み感といい、2クールアニメとして作った方がより輝けた作品なんじゃないかとは思わないでもない。

 

Extreme Hearts

無いリソースを上手くやりくりして生み出された良作。作画は決して良くなかったが、試合では昔ながらの演出手法を大胆に使って動かせない分の迫力をカバーしたり、ライブシーンでは撮影技術やコンテの上手さで作画の不足分を補ったりなど、ある種割り切った作りができていたのが素晴らしかった。

設定面で色々な要素を詰め込みまくっていた分、脚本面はとことん王道で、ある種スポコン的な、分かりやすく熱い展開を作り出せていたのも評価点*2。最終回もライブシーンの映像(特に撮影とカメラワーク)に相当力を入れながら、今までの積み重ねを上手く活かした泣き展開を作り出せていて満足度が高かった。

正直始まる前はキャラデザ微妙だし、設定的には明らかにウマ娘の後追いしてるし、これ面白くなるのかなぁ…とか思っていたけど、予想以上に上手く作られていて正直びっくり。おみそれいたしました。

 

神クズ☆アイドル

夏アニメで一番笑った作品。特に仁淀担がドツボで、オタク特有の謎ワードセンスと大袈裟すぎるリアクションには毎回腹がよじれるほど笑わせてもらった。仁淀のアイドルとは思えない異常さや、アサヒが乗り移ったときの変貌っぷりも面白かったし、それがオタクの反応を通すことでさらに分かりやすく、面白いギャグになって視聴者に伝わってくる構造になっていたのも良かったなと。

放送前から、これは…!と思っていた仁淀担の声優さん方3人*3のチョイスもやはりドンピシャ。たいちょー*4に至ってはもはやただの中の人でしかなくてたっぷり笑わせてもらった。吉野担役の種﨑さんもグッドなチョイス。

勿論ギャグだけが強みということもなく、仁淀の成長物語を軸にしたストーリー面にも一定の良さがあった。この辺りは原作の出来の良さがよく出ていたと思う。

基本は好感触な中で敢えてマイナス点を挙げるなら、やはりCGかなと。ギャグ軸で1クールやり通す選択肢もある中、最終回丸々1話を費やすくらいライブに力を入れることを選択したのであれば、もう少しCGのクオリティも求めたいところではあった。予算の問題もあるだろうけど、何の工夫もないCGダンスをただ見せるだけのライブシーンが殆どだったのは残念かなと。いっそライブシーンを動かしたいという思いを完全に捨てて、止め画中心で魅せる方針を取ってくれていた方が、総合的には評価できたかもしれない。

 

シャドーハウス 2nd Season

謎は解けていくものだから仕方ないとはいえ、1期の頃にあった何も分からない不気味さ、恐怖感、その中でひと際輝くエミリコの明るさ…みたいな今作の良さが薄れていたのは残念だった。エミリコ自身の出番もだいぶ少なくなっていたし、その分増えたケイトメインの推理パートも情報量とキャラ数が多くて、アニメだけだと不親切さは否めなかった。ここら辺は原作を読んだ方がより能動的に考察しながら楽しめたかもしれない。

映像のクオリティやキャラクターの魅力に関しては何も問題なかったので、純粋に話の面白さの差分だけ1期より評価を落とした感じ。とはいえそれでも十分引き込まれるものはあったし、後半は今作特有のヒリつくような怖さが感じられる場面もいくつかあった。続きも気になるので続編お待ちしております。

 

A

邪神ちゃんドロップキックX

ミクさんの登場、ふるさと納税ご当地回など、色々なアイデアを詰め込みながら何とか作り上げられた3期。内容自体はこれといって言うこともない慣れ親しんだ邪神ちゃんんのそれだったが、Youtubeで違法アップロードに対抗したり、ニコ動でMAD投稿祭を開催するなど、アニメ外での積極的な宣伝活動がとかく目立つ作品だった。

ただ製作側が自信を持っていたご当地回*5が総じて厳しい評価にあったのは痛かったか。実際自分の視聴感としても物足りなさはあったし、露骨に利権が絡んでるエピソードをアニオリで新たに作るのはやはり難しいんだろうなと。

その反省もあって(?)、4期はクラウドファンディングで作ることが決定*6。とてつもなく長い道のりになることは間違いないだろうが、中堅アニメの星として、新たなビジネスモデルを構築すべくこれからも頑張って欲しい。そして4期が見られる日を楽しみにお待ちしております。

 

異世界薬局

個人的にいわゆる”なろう系”アニメは、どうしても主人公が受け付けなかったり、低クオリティすぎて見ていられない作品が多いのだけど、今作に関しては特別不快感を覚えることもなく、すらすら完走できた。

一番良かったのは、主人公ファルマのキャラクター性。強大な力とチートじみた知識量を兼ね備えながら威張ることなく、誰に対しても親身に接する姿勢には好感が持てたし、壁に直面した時にそれを一人で解決するのではなく、周りの助けを借りながら乗り越えていく姿にはなろう系主人公らしからぬ普遍的な魅力があった。

映像面は突出した良さこそないものの安定感があり、場面に応じた的確で過不足のない演出と作画リソースの割り振りができていたと思う。ことシリアスなシーンをきちんとシリアスに演出できていた点はポイントが高い。

全てにおいて飛び抜けた良さはなく、中盤の展開が微妙に感じたこともありこの評価に落ち着いたが、数多の低予算なろう系とは比較するのも馬鹿らしいくらい、本当にしっかりとした良作だった。

 

B

てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!

基本的にそこまでギャグが刺さる作品でもなかったが、5話の北海道バス回は異色の出来で引き込まれたし、8話のドキュメンタリー密着&ヒーローショーの衣装でシンデレラの回は爆笑しまくってたしで、部分部分刺さるエピソードがあったのもまた事実。最終回もなんだかんだと上手く纏まっていたから、もう少し評価上にしても良いのかも…。

と一瞬思ったが、実際のところは殆どダラ見していたのが現実で、回によってはあまりの退屈さに途中で視聴を打ち切っていたりもしたので、まあそこら辺をトントンと均したらこのくらいの評価ということで。

 

ラブライブ!スーパースター!! 第2期

映像面のクオリティは総じて高かったが、それを帳消しにして有り余るくらいにシナリオ面が壊滅的な作品だった。特にLiellaにとって一番の目標&ライバル枠だったサ二パを直接対決前に敗退させる采配は致命的で、本来サ二パに勝つことで得られるはずの1期から積み上げてきたカタルシスが、この一手で完全に消滅してしまっていた。”ラブライブの舞台でサ二パに勝って優勝する”、それを最大の目標に定めて1期から成長物語を描いてきたはずなのに、結局サ二パに勝てないどころか、直接対決の一つもないようでは肩透かしも良いところ。

新1年生は総じて良いキャラクターだったが、2年生組の掘り下げに尺を取られて後半はメインの話に殆ど絡めず、その良さを十分に活かしきれないまま1クール終わってしまったのも残念だった。特にラブライブシリーズ中でも屈指に濃厚で良質な百合カップル、四季メイを扱いきれなかった罪は重い。

キャラを増やしたいアイドルコンテンツとしての方針に縛られて、制作側にも色々難しいところはあったんだろうなと同情はするが、それでもやはり単体のアニメ作品としてはどうしても厳しい評価をせざるを得ない。3期も正直死産な気がするけど…何とか頑張って欲しいなぁ。せめて曲だけでも良いものを…。

 

ユーレイデコ

監視社会、SNSの風刺…描きたいテーマはある程度伝わってきたけれど、一方でエンタメ作品として見るには多方面で魅力の足りない作品だった。特にキャラクターの魅力不足は痛くて、主役2人=ベリィとハックのキャラクターの芯となる部分(目標や信念)がいまいちはっきりしなかったり、会話からコメディに繋げられるような面白い個性を備えたキャラがいなかったりしたことが、この作品を”楽しむ”上での全体的な物足りなさに繋がっていたと思う。

構成面に目を移すと、ユーレイ探偵団が結成されて物語が本格的に動き出すまでに4話もかかるスタートダッシュの悪さが目立つ。現代の1クールアニメとしては悠長すぎるし、せめて3話中に物語の方向性くらいは固めて欲しかった。しかもこの間キャラクターの魅力を引き出したり、今後に向けた伏線を張ったりもできていないから余計に苦しい。

作画やキャラデザもそれ自体が魅力になるほどではなく、演出面でも秀でた回はなし。中盤以降は内容的に悪くはない回もちらほらあったとはいえ、全体を通して見た時に序盤の不調とストーリー以外の部分の魅力のなさがあまりにも厳しいのでこの位置に。

 

プリマドール

感動特化の作風*7なのに感動できなかった。それが全てかなと。

何よりもキャラクターの掘り下げが不足していた印象が強い。1人のキャラに対しての掘り下げとそれに付随する感動エピソードが1話で完結してしまっていて、話数を横断した段階的な掘り下げや、内面の変化の描き、細かな描写の積み上げが殆ど行われていなかった。キャラクターに対して十分に愛着を持つ前に感動展開がやってきてしまうのだから、必然的に得られる感動も少なくなってしまう。

そもそものキャラ造形にしても、あまりにも一面的すぎた。どのキャラクターも表面的な属性で動かされているだけでギャップや意外性がなく、思想信条、意思や目標といったものも提示されていないことが多かった。どのようなキャラクターでも、表面的な属性とそれを裏切る中身の部分、ないしキャラクターの芯をなす強い思いがあって初めて魅力的に映るのであって、そのような魅力を兼ね備えたキャラがいなかったのは痛かったなと。

作画キャラデザに関しては素晴らしかったが、逆に言うとそれ以外に特別褒めるところもないような作品だった。Keyはやっぱり2クール以上の長い尺で作品作るべきだよ...。

 

RWBY 氷雪帝国

ワイスを救うだけの話を1クール弱引っ張り続けたらそりゃ飽きるよね、というお話。ナイトメアっていう敵を新たに作ったなら、せめて複数人の心の中を渡り歩いて本筋の流れを作るとか、敵にバリエーションを持たせるとか、何かしらやり方はあっただろうに、結局話が全く膨らむこともなく1クール終わってしまったのが残念だった。

何より、ワイスの夢の中に潜ってワイスの内面を掘り下げる、という内容自体が明らかに新規客向けではなかった。冒頭に総集編を入れてまで新規客に見てもらうことを意識していたはずなのに、いざ新規パートに入ってやることが、既存のファン向けの既存キャラの掘り下げなのでは構成がちぐはぐすぎる。

映像面に関しても時折凄い作画が見られるくらいで、基本はずっとボロボロ&ボロボロ。とあるフォロワーさんが言ってたけど、本当に長田*8川田*9の落書き帳でしかなかった。シャフトはどうしてこうなっちゃったかなぁ…。

 

総評

リコリコが序盤から強烈な存在感を放ち、近年のオリジナルアニメとしては稀に見る大ヒットを記録する一方で、よふかし、ルミナス、エンゲージキスなど、中盤以降に伸びてくる作品も多かった印象。その中で終始圧巻のクオリティを保ち続けたアビス2期が一歩抜け出したようなクールだった。

序盤から話題沸騰してどんどん知名度を伸ばすリコリコと、1,2話ですっかり見放されてしまったエンゲージキスの対比も印象的だった。終わってみればアニオタ内の評価としては(少なくとも自分の観測範囲では)そこまで差がなかった両作品だけど、実績として表れてくる数字には雲泥の差があって。エンタメが飽和して見切りの早くなった現代において、スタートダッシュを決めることがいかに大事か、逆に序盤の掴みに失敗することがいかに罪深いか、改めて再確認させてもらえるようなクールだった。

個人的には先行上映会のときから起算して約3か月半、リコリコというアニメを楽しみ尽くせたし、他にも面白いアニメが多くてかなり満足のできるクールだったかなと。秋アニメは秋アニメで面白いアニメも、作画案件も多いし、今年いっぱいは十二分すぎるくらいにアニメを楽しめそうです。

 

*1:

t.co

*2:とことん王道だったからこそ、このくらいの評価に留まっているとも言えるのだけど

*3:上田瞳大地葉石見舞菜香

*4:大地葉(たいちよう)

*5:

akiba-souken.com

*6:

jashinchan.com

*7:ほぼ人間と一緒なのに都合のいいところだけ機械設定のオートマタ、特にこれといった理由付けもない歌要素、戦後の動乱期という露骨に悲劇を匂わせやすい時代設定、etc.

*8:長田寛人さん

*9:川田和樹さん