『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OPアニメーション論考

 『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OPアニメーションについて、主に物理的な側面から分析しました。

❚絵コンテ・演出
ちな 

❚作画監督
渡部さくら 

❚原画
中村七左、まりんぐ・そんぐ、小澤龍之介、上田翔太郎、牧野秀則、井川典恵、諸冨直也、真鍋 元、本田舞波、渡部尭晧、河本有聖、内藤丈太朗、ふじいりな、山﨑匠馬、MNDG、松本元気、駿、西原大樹、宮原拓也、木曽勇太

 

www.youtube.com

 

OPのコンセプトについて

 まず『上伊那ぼたん』OPのコンセプトについて考えます。

 本OPの大きな特徴として、キャラクターが自らの手でカメラを持って日常風景を映像に収めているような演出がなされていることが挙げられます。多くのカットに手ブレ処理が施されていることや、6人全員が映ったカットが存在しないこと、キャラクターの自然体の姿を捉えた映像であることなどを考えると、そう解釈するのが自然でしょう。

 また本作の設定としては、メインキャラクター6人が一緒の寮で生活していることが特徴的です。同じ建物で寝食をともにする仲間であることから、心理的な距離が近接しており、物理的に近い距離から自然体のキャラクターの姿をカメラに収めることができます。加えて多くのカットが寮の敷地内を舞台としており、画面に映る空間の広さは限定されています。

 以上2点から、本OPのコンセプトを「作中のキャラクターの目線で、キャラクターの周りの限定された空間やキャラクターを切り取ること」と考えます。本記事ではこの認識に基づいて、以下の論考を進めます。

 

物理的な特徴

 本OPが持つ、他のOPとは異なる物理的な特徴として、以下の2点が挙げられます。

  • 画面比が4:3である
  • 8mmフィルム風の画面、18fps

*1 *2

 この2点について、順にその手法を選択する利点と、実際のOPの構成にどう活かされているかを見ていきます。

 

4:3を選択する利点とOPのコンセプトとの噛み合い

 そもそも4:3は現代アニメの標準である16:9と比較して、画面の横が狭く、縦に広い画面です。この物理的な特徴は、以下のような効果をもたらすと考えられます。

①空間の広がりが限定される

 横方向に広く映せないので、広角レンズで撮影した映像のような、画角が広く遠くまで見渡せるような眺望を映すのには向きません。空間の広がりが限定された、狭い空間を映すのに適した画面比と言えます。

②キャラクター1人を映す場合に画面に占めるキャラクターの割合が大きくなる

 キャラクター(人間)は縦長ですから、画面に1人キャラクターを立たせる場合を考えると、横の広い16:9より横の狭い4:3の方がキャラクターの映っていない空間の割合が減少します。画面空間を効率的に利用できるため、少数のキャラクターにフォーカスした映像を作る場合に適した画面比と言えます。

 

 以上2点から、本記事では4:3を「キャラクターを中心とした狭い空間を映すのに向いている画面比」だと位置づけます。

 

 さて、本OPのコンセプトは「作中のキャラクターの目線で、キャラクターの周りの限定された空間やキャラクターを切り取ること」だと先に定義しました。このコンセプトは4:3の利点とマッチしており、4:3を用いることは合理的であると言えます。

 以上を纏めると、本OPはメインキャラクター6人が住む寮という狭い空間で、キャラクターが自らの手で撮影した日常風景を切り取った映像であり、キャラクターの周りの限られた空間に焦点を当てていることから、横幅の狭い4:3の比率を用いる意義のあるアニメーションであると言えます。

 

8mmフィルムの利点とOPのコンセプトとの噛み合い

 8mmフィルムは1950年代〜1970年代にかけて用いられていた映像記録フォーマットで、ホームビデオの撮影用として大衆向けにも普及しました*3。懐かしさと温かみを感じる質感が特徴です。

 本OPは作中のキャラクターが自らの手にカメラを持って日常風景を撮影していることをコンセプトとしたアニメーションですから、まさにホームビデオを撮影しているようなシチュエーションを想定していると言えます。この点で8mmフィルムの映像を再現することはホームビデオならではの温かみやノスタルジーを醸成することに繋がり、アニメーションのコンセプトを的確に補強していると言えます。

 

ちな氏の映像作品として

 ちな氏が監督を手掛けたアニメーション作品は以下3作。

 いずれも画面比は4:3ですから、4:3はもはや、ちな氏の代名詞と言ってもよいでしょう。ただ明確に撮影者の存在を意識した映像は恐らく上伊那ぼたんOPが初と思われます。

 最近のちな氏は絵柄も含めてレトロアニメーションの復刻といったような方向性で4:3を使っていた節があり、監督作でも後者2つはその文脈に乗ったアニメーションでした。今回同じレトロでも実写レトロに舵を切って、そしてここまでインパクトのある映像を作り上げたというのは、ちな氏の経歴の中でも大きな転換点であり、マイルストーンになるような気がします。。

 

余談

 以前『スキップとローファー』のOPについて分析した際、「カメラが不在であることで自然体を切り取ることに成功している」というような分析をしました。キャラクターが誰にも見られていないと知覚しているからこそ、自然体の姿を画面に収めることができていると。

yuu-1101.hatenablog.com

 一方で『上伊那ぼたん』のOPは、むしろカメラの向こうにいる撮影者の存在を強く意識させることで、自然体の姿を切り取っていると知覚させています。キャラクターは見られていると知覚しているが、見られている対象が暗黙的に寮に住むキャラクターに限定されているため、自然体の姿を画面に収めることができていると。

 勿論切り取っている対象が「ダンス」と「日常の何気ない風景」では、一般に他人に見せることを想定しているかの度合いが違いますから、一概に対比できるものではありません。ただスキローがカメラをキャラクター空間の外に置き、2人の姿を同時にカメラの中に収めることでキャラクターの自然体を描いていたのに対し、上伊那ぼたんがカメラをキャラクター空間の中に置き、キャラクターを撮影者と被写体の関係に据えることで、キャラクターの自然体を画面に収めていることに成功しているのはアプローチとして非常に対照的です。

 カメラを外に置くか内に置くか。カメラを撮影手段と捉えるか、キャラクターの目線を代弁するものと捉えるか。2つのOPアニメーションが全く違うアプローチで、同様に自然体のキャラクターの魅力を引き出すことに成功しているのは面白いなと思います。

 

 

 

*1:

*2:

*3:映写機でしか見れない8ミリフィルムをデジタル化した | 富士フイルムのダビング・スキャンサービス

『Fate/strange Fake』6話の関連ツイート等まとめ

絵コンテ:宮川駿
演出:森大貴、宮川駿
総作画監督:山田有慶
作画監督:井上真佑、内藤丈太郎、とまど
制作進行:伊藤誠
原画:
井上真佑、内藤丈太郎、安岡連斗、服部乃樹、Chris、青木駿介、渡部尭皓、山崎晴美、谷口円香、ホネほね、宮川駿、白河、Roadsign、さんざし飴、とまど、坂口翔哉
WIT STUDIO 杉田柊、富岡海任
CygamesPictures 落合良亮
スタジオコロリド 菅沼胤 (teamヤマヒツヂ)

 

  • 絵コンテ・演出
    • 宮川駿
    • 森大貴
  • 作監・原画
    • 山田有慶
    • 井上真佑
    • 服部乃樹
    • 内藤丈太郎
    • 杉田柊
    • Road Sign
    • 山崎晴美
    • 富岡海任
    • Chris
    • dino
  • 第二原画
    • しらたか
    • 杉山和隆
    • おかざきおか
    • 柴田駿
    • Anno
    • Celest
    • CLNDSTN
    • Rhythm
    • Virgil Dempsey
    • Mahmoud Moftah
  • アニメP・制作進行・脚本
  • その他
  • 参加スタッフ以外の反応
    • 温泉中也
    • 青木健一郎
    • あにかり
    • みやそ
    • 寺本将悟
    • 伊藤裕太郎
    • 荒井和人

 

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アニメの映像解析は視聴者の感情に寄り添えているか

 普段考えていることをつらつら書いた文章です(約1600文字)。

 

 既存のアニメにおける映像解析は、演出について語った評論が主流だと思います(少なくとも筆者はそう感じています)。評論は多くの読者にアニメについてそれまでとは異なる見方を提示し、理解を深めるのに役立つものです。

 一方で評論はアニメを鑑賞する上で追加の楽しみ方を提示するものであって、画面から受ける印象を事細かに解説してくれるものではありません。評論は画面が視聴者に直接与える影響について語るものではなく、むしろ本編の映像から直接得られる印象から飛躍して、映し出されているモチーフの解説や社会情勢と絡めた話がメインになることが多くあります。

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話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選

 過去2年間はTwitterに短文で上げていたのですが、毎回集計の中に1個だけTwitterのリンクが入っているのも不格好だなと思って今年はブログに。文章の長さはあまり変わらずですが、ご容赦を。

↓23年

https://x.com/yuu_k_1101/status/1741379179332145431

↓24年

https://x.com/yuu_k_1101/status/1874031594996195766

 

 ルールは以下の通り。

■「話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選」ルール
・2025年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

https://aninado.com/archives/2025/11/30/1109/

 

  • 1.『BanG Dream! Ave Mujica』 4話「Acta est fabula.」
  • 2.『メダリスト』4話「名港杯 初級女子FS(前)」
  • 3.『アポカリプスホテル』4話「食と礼儀に文化あり」
  • 4.『忍者と殺し屋のふたりぐらし』6話「巨乳と殺し屋のふたりぐらし」
  • 5.『前橋ウィッチーズ』10話「今日のこと、忘れても忘れないよ」
  • 6.『タコピーの原罪』5話「2022年のきみへ」
  • 7.『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』7話「仕事と見返り」
  • 8.『瑠璃の宝石』9話「190万トンのタイムカプセル」
  • 9.『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』10話「ふたりっきりの旅行なんて、ムリ!?」
  • 10.『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』 22話「また逢う日まで」
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2025年5chベストアニメランキングにおける大規模な多重投票疑惑について

 2025年5chベストアニメランキングでかつてない規模の多重投票疑惑を観測したので報告します。当アカウントの集計結果ではこれらの投票は最後の1つを残して全て排除します。

 多重投票と判定した根拠は以下の3点です。

①挙げている作品群の一致

②ワッチョイ下4桁被り

③感想の内容の一致や簡素さの度合い、個人の視聴体験の欠如

多重投票疑惑のある全投票の一覧は下記リンクに乗せてあります。

www.notion.so

 

以下順に解説します。

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2025年下半期TVアニメ作画10選

2025年夏秋クールに放送されたTVアニメから良かった作画を10個選出。それ以外の縛りはなし。

  • 1.『その着せ替え人形は恋をする Season 2 』1話 原画:五十嵐海
  • 2.『瑠璃の宝石』1話 原画:中井杏
  • 3.『タコピーの原罪』4話 原画:??
  • 4.『瑠璃の宝石』7話 原画:内山玄基
  • 5.『瑠璃の宝石』9話 原画:Rui2
  • 6.『瑠璃の宝石』9話 原画:佐々木菜美子
  • 7.『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』9話 原画:大井翔
  • 8.『真・侍伝 YAIBA』22話 原画:林祐己
  • 9.『真・侍伝 YAIBA』23話 原画:よーと
  • 10.『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』167話 原画:angelkade
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2025年上半期TVアニメ作画10選

2025年冬春クールに放送されたTVアニメから良かった作画を10個選出。それ以外の縛りはなし。

  • 1.『魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~』1話 原画:ゆうげん・RB
  • 2.『ババンババンバンバンパイア』11話 原画:田村亮太(?)
  • 3. 『忍者と殺し屋のふたりぐらし』1話 原画:長田寛人
  • 4.『mono』OP 原画:もああん
  • 5.『mono』1話 原画:we1k
  • 6.『アポカリプスホテル』OP 原画:竹田光伸
  • 7.『ある魔女が死ぬまで』3話 原画:??
  • 8.『mono』3話 原画:大久保俊介、作画監督:今岡律之
  • 9.『LAZARUS ラザロ』4話 原画:青山浩行
  • 10.『真・侍伝 YAIBA』6話 原画:前並武志
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