2023年下半期 TVアニメ作画10選

2023年夏秋クールに放送したTVアニメから良かった作画を10個選出。それ以外の縛りはなし。

  • 1.『トニカクカワイイ 女子高編』1話より 原画:西島翔平
  • 2.『呪術廻戦 懐玉・玉折』27話より 原画:加藤滉介
  • 3.『ONE PIECE』1074話より 原画:ホネほね、Chansard Vincent 他
  • 4.『呪術廻戦 渋谷事変』37話より 原画:中冶無(0:00 - 0:14)
  • 5.『呪術廻戦 渋谷事変』38話より 原画:rui
  • 6.『葬送のフリーレン』9話より 原画:??
  • 7.『葬送のフリーレン』9話より 原画:藤本航己
  • 8.『葬送のフリーレン』9話より 原画:吉田奏子
  • 9.『呪術廻戦 渋谷事変』40話より 原画:温泉中也
  • 10.『呪術廻戦 渋谷事変』40話より 原画:宮崎創
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2023年上半期 TVアニメ作画15選

2023年冬春クールに放送したTVアニメから良かった作画を10個選出…するつもりが言及したい作画が多かったので5個追加して15選に。それ以外の縛りはなし。

 

 

1.『お兄ちゃんはおしまい!』1話より 原画:中井杏

細やかな芝居づけが際立つシークエンス。何気ない仕草1つ1つが可愛いし、顔の角度や表情、手の芝居など、細部まで行き届いたアニメーションの完成度には目を見張るものがある。

このシーンの原画を担当した中井さんが今作放送時点でアニメーター1年目、しかもこれがアニメ初原画なのも末恐ろしい。若き才能に今後も要注目。

www.sakugabooru.com

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2023年TVアニメ OP・ED10選

2023年に放送されたTVアニメのOP・EDから10個選出。特に縛りはなし。クール順でクール内は順不同。

 

 

①『お兄ちゃんはおしまい!』OP ”アイデン貞貞メルトダウン

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絵コンテ・演出:渡辺明夫

楽しさに満ちたOP。色彩、カメラワーク、シチュエーション、全てにおいて自由でアイデアに溢れたアニメーションが弾けている。みとん氏の変態回り込みシャワーシーン、松隈氏のモニターからカメラが引いていく背景動画など、難易度の高い作画がさらりと組み込まれている点も見逃せない。

 

 

②『お兄ちゃんはおしまい!』ED ”ひめごと*クライシスターズ”

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絵コンテ・演出:鈴木典光

驚愕の一人原画。鈴木典光ここにあり。”ヌルヌル動く”というのは必ずしも褒め言葉たり得ないと思っているのだけど、この領域まで密度が濃ければもはやヌルヌル動かすことに必然性すら感じられる。6人+1匹が絶え間なく動き続けるサビの作画はまさに狂気。

 

 

③『スキップとローファー』OP ”メロウ”

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絵コンテ・演出:出合小都美

23年の一番を選ぶならこれ。2人の関係性を瑞々しくも生き生きと描き出したサビのダンスシーンはアニメ史に残すべき名演出。花で季節を表現した41s~の4カットなど、小物の使い方に出合監督らしさが光る。パステルな色使いや図形による装飾も楽しい。

 

 

④『【推しの子】』OP ”アイドル”

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絵コンテ・演出:山本ゆうすけ

ベタだけど、やっぱり外せない一本。キャッチーなメロディーもセンセーショナルな歌詞も、作品にマッチしているから、より素晴らしい。密度の高いカット割りで、豪華絢爛な参加スタッフの力量をきちんと活かした十全のOP。

 

 

⑤『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』OP ”MAGICAL DESTROYER”

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絵コンテ・演出:沓名健一

最初のVercreek作画からして垂涎もの。髪や服のなびきには自然な精緻さがあるし、果汁を舐める動きの実在感はもはや芸術。
1つ1つのカットがスタイリッシュなカッコよさに満ち満ちていて、シンプルなルックも個々のアニメーターの作画力を際立たせる。カオスとカッコよさが絶妙なバランスで共存したOPアニメーション。

 

 

⑥『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』OP ”Shine In The Sky☆”

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絵コンテ・演出:上田華子

子供特有の手足の短さと、それ故の元気できびきびとした動きを活かした、芝居づけ主体の音ハメが心地いい。サビ前のハイタッチシーンに各キャラの個性が生き生きと表現されているし、サビのダンスシーンは絶品。

 

 

⑦『天国大魔境』OP ”innocent arrogance”

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絵コンテ・演出:Weilin Zhang

若き天才Weilin Zhangがその才能を如何なく発揮した珠玉のOPアニメーション。アニメーションの自由さを体現したような型破りなコンテが良いし、それでいて終末世界の無秩序な開放感やキャラクターの葛藤が的確に表現されていて、見入らされる。

 

 

⑧『はたらく魔王さま!! 2nd Season』ED ”bloomin'”

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絵コンテ・演出:小松和映

ルックも作画もシンプルでキュート。サビの鏡前ダンスは見ているこっちまで楽しくさせるよう。会いたい人に会う前にオシャレを頑張る女子の、乙女心に満ちた軽やかなEDアニメーション。

 

 

⑨『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』OP ”ソングオブザデッド'”

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絵コンテ・演出:川越一生

古見さんは、コミュ症です。』でもその才能をいかんなく発揮した川越監督が送り出す珠玉のOP。軽快なダンスが小気味よく、歌詞に合わせた振り付けもまた楽しい。混沌とした中にも統制の取れたサビのダンスシーンは圧巻。放送中に完成してくれて本当に良かった。

 

 

⑩『アンデッドアンラック』OP ”01”

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絵コンテ・演出:松浦力

影無し作画一枚絵の圧倒的なセンス。髪のなびきは優雅で美しく、細かなカットの挿入による音ハメも心地いい。くすんだ色彩やエロティックなカットの挿入がダーティーな雰囲気を作り出し、ジャンプアニメのOPとは思えないような質感が生まれている。

 

 

 

以下、惜しくも選外。

 

かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』OP ”Love is Show"

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絵コンテ・演出:菊池貴行

イデアの宝庫。かぐや様のOPは毎回テイストが違って飽きさせない。

 

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~』OP ”spiral"

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絵コンテ・演出:和田慎平

賛否両論あるかもしれないが、このOP曲は無職転生に相応しい素晴らしい楽曲だと心から思うので。和田慎平さんのコンテも良い。

 

『わたしの幸せな結婚』OP ”貴方の側に。”

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絵コンテ・演出:廣江啓輔

初絵コンテ演出でいきなりこれはビビる。

 

『呪術廻戦 懐玉・玉折』OP ”青のすみか”

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絵コンテ・演出:神谷雄貴

爽やかな青春、青の世界。後に失われるからこそ、美しい。

 

『呪術廻戦 懐玉・玉折』ED ”燈”

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絵コンテ・演出:新井陽次郎

新井陽次郎さんの色使いが好き。

 

『デキる猫は今日も憂鬱』ED ”破壊前夜のこと”

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絵コンテ:鈴木信吾
演出:鈴木信吾、横峯克昌

動画は消えているけど、本当に動きは良かった。

 

ONE PIECE』OP ”最高到達点”

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絵コンテ・演出:石谷

ワンピースのOPはここ最近最高到達点を更新し続けている気さえする。

 

『五等分の花嫁∽』OP ”五等分の未来”

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絵コンテ・演出:長田寛人

これぞ長田寛人。質感もカット割りもカメラワークも、彼にしか作れないであろうものがそこにある。

 

 

 

番外:TVアニメ以外のOPで良かったもの。

ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』OP ”Glorious Moment!”

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絵コンテ:山本健
演出:淵本宗平

端から端まで全部カッコいい。楽曲も映像もパーフェクト。

 

Fate/Samurai Remnant』OP ”残夜幻想 feat. 六花”

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絵コンテ・演出:温泉中也

温泉さんの絵がただただ上手すぎるOP。

 

2023年夏アニメ最終評価

2023年夏アニメの最終的な評価と感想。

 

評価

SSS:(該当なし)

SS :(呪術廻戦 懐玉・玉折) 無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

S+:BLEACH 千年血戦篇 -訣別譚-

S:アンデッドガール・マーダーファルス ホリミヤ -piece- 百姓貴族 BanG Dream! It's MyGO!!!!! わたしの幸せな結婚 

A:(該当なし)

B:(該当なし)

C:(該当なし)

 

 

SS

(呪術廻戦 懐玉・玉折) 

正確には2クールものですが、懐玉・玉折単体のひとまとまりで評価しておいた方がいいだろうということで。

作画・演出ともに最高峰、過去編ということで内容のインパクトも強く、1期と比べても評価の高い章になりました。描かれる出来事が多い分、あっさりと過ぎ去る部分もありましたが、一方でここぞのシーンの存在感には凄まじいものがありました。特にわざわざEDを2回流してまで、殺される瞬間の落差を作った27話は出色の出来。五条覚醒時の天から光が降り注ぐ構図、夏油が闇落ちする時に足下に広がる暗色など、色彩や撮影を幅広く使った演出も魅力的でした。

この5話だけで評価するなら年間トップ5は固いと思わせてくれるような、そんな突き抜けた存在感と完成度を持った章だったと思います。

 

 

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

”人”を丁寧に描いた1クールだったと思います。失意から立ち直るルーデウスの心情も、シルフィのいじらしさも、1クールかけて丹念に描写を積み重ねたからこそ、2人が結ばれた瞬間の感動には染み入るものがありました。

特にルーデウスの内面の描き。彼の失意と絶望を理解させる上で、EDという、男性視聴者なら誰でも他人事ではなく、身につまされざるを得ない話題を取り上げたのが上手かったと思います。下の話題なんだけど、決してギャグとして腐せないんですよね。むしろ状況の深刻さと辛さがより生々しく伝わってくるというか。EDに1クールかけて真剣に向き合ったおかげで、ルーデウスの気持ちに深く寄り添えるような物語が構築できていたのだと思います。

話としては脇道に逸れるような、今後に繋ぐためのエピソードも多かった印象ですが、その中でもナナホシとの邂逅など、物語の核心に迫る回には見応えがありました。映像は序盤こそ苦しい場面もあったものの、おにまい終わりのスタジオバインド本隊が合流してからは、申し分ないクオリティのアニメーションが見られたように思います。作画だと、序盤で主要なアクションシーンの大半を担っていた邱家和さんの活躍、7話の山﨑匠馬さん作監パート*1などは特に印象深いです。

総じて1期ほどではないにせよ、内容アニメーションともに、十二分に満足度の高いアニメーションでした。恐らく原作の最後までやってくれるだろうと信じて、続きも楽しみに待ちたいと思います。

 

S+

BLEACH 千年血戦篇 -訣別譚-

オシャレでカッコいい、今作の良さを最大限に引き出す画面づくりと演出は流石でした。1期ほど突き抜けたクオリティの回や話の大きな盛り上がりはなかったものの、地力の高さできちんと魅せてくれます。最終2話の零番隊の戦いなど特に象徴的ですが、原作にはないアニオリパートを挟んでくれるところも良かったです。原作勢に対するファンサービスとして魅力的なのは勿論、原作未読勢から見てもしっかりと面白い、アニメを面白くする上できちんと機能するようなアニオリを挟めているところに、今作の価値を感じます。

個人的な趣味の話だとバンビエッタがめちゃくちゃ良かったですね。そもそも見た目が突出して可愛くて、ストレス解消にイケメンを殺す一面もあってますます魅力的なのに、ゾンビ化してから更に可愛いですからね。虐める東山、虐められる竹達の構図はズルです。癖以外の何物でもありません。

結局のところ、竹達ボイスが虐められているのが好きなのかもしれませんね。秋クールはアウラが負けるところを何回も何回も見てニヤニヤしていたので……()

 

S

アンデッドガール・マーダーファルス

推理ものとして、ミステリー部分がよく作り込まれていました。特に最後に描かれた人狼編は、トリックも話運びも秀逸で、明かされた真実になかなか唸らされた記憶があります。また、畠山監督らしいアイデア豊富な演出も魅力的で、ミステリー作品という会話劇中心で画面が単調になりがちな題材を、飽きさせることなく魅せる画面作りには流石のものがありました。

キャラの魅力も光りました。落語調の言い回しが耳に心地いい津軽、ミステリアスで底の見えない雰囲気にともよ様の語り口が絶妙にマッチした鴉夜様、堅物でツッコミ役をこなしながら高い戦闘技術と長物で物語に華を添える静句。主要3人の組み合わせが良かったです。各々が個性的で、各人にしかこなせない役割があって、かつ掛け合いも面白い。この3人だけでいつまででも見ていられそうな安定感がありました。

反面、惜しかったのはキャラの多さ。この先も続いていく原作ならば許容できるキャラの多さも、1クールしかないアニメではどうにも要素がゴチャついているように感じられてしまいます。最終章なんて本筋の推理と全く関係ないところで敵と争わないといけなかったわけで、必要以上に物語がゴチャついてしまっていました。1クールのアニメという媒体に限って言うならば、短編の推理ものをただ並べ立てるスタンスの方が面白かったようには思います。

 

 

ホリミヤ -piece-

1期の合間を縫う方式でしたが、これはこれでストーリー要素の薄い学園ものとして楽しめました。原作17巻分を圧縮した結果、本筋の話が駆け足になってしまった1期よりも、楽しめた度だけで言えばむしろ上かもしれません。

元々キャラクターに強みがあって、掛け合いも面白い作品だったので、何気ない日常を中心に描いたことでその良さを存分に活かせていたように思います。ふとしたところでやたらカッコいい宮村とか、当たりきついけど乙女心全開な堀さんとか、純粋に可愛いレミとか、庶民派な良さがある吉川さんとか……。1クール分の積み重ねが前もってある分、キャラクターの紹介をする手間もなく、日常風景を集中して描き通せたのは間違いなく今作の強みでした。

卒業まできっちり描ききった構成もまとまりがよく、社内中心に安定した体制で作りきったCloverWorksの制作も見事でした。7話の石浜監督絵コンテ演出回などは、特に出来が良いので是非見てほしいところ。総じて程よい満足感のある作品でした。

 

 

百姓貴族

普段触れることのない世界について、面白おかしく知れる楽しさがありました。1つ1つのエピソードが濃く、そして面白い。ショートアニメならではの密度感をしっかりと味わえる良作だったと思います。

今年は僕とロボコ、百姓貴族と3分ショートアニメに良作が多くて嬉しかったですね、気楽に見れて面白い作品の存在は本当にありがたい。

 

 

BanG Dream! It's MyGO!!!!!

客観的に見て、それほど出来の悪い作品ではないでしょう。結局のところは、”刺さらなかった”が一番正しい感想なように思います。ギスギスした関係性の中に離れがたい良さを見出す、いわゆる”女女”の文脈に則った作品ですが、どうにも自分はギスギスは解消されるものであって欲しいようで、最後までその良さが理解できなかった節があります。また今作は”個”を大事にする作風で、良くも悪くもキャラクターに他人への配慮に欠けた行動を取らせることが多くありましたが、それも自分個人の主義と相性が悪かったように思います。

逆に”刺さった”のは曲。特に春日影は繰り返し何回も聞くほど好きな曲になりました。映像面では演奏シーンのみならず、日常シーンでも演出芝居ともに随所に工夫が見られ、CGアニメーションで生々しい実在感を上手く表現できていたように思います。

明確に批判すべきは最終回の構成くらいでしょうか。2期に繋ぎたい意図は理解しますが、「MyGO!!!!!」のアニメの本編で、「Ave Mujica」のライブをAパートの殆どを使って流す構成は、「MyGO!!!!!」の物語を求める視聴者に対して不親切でしょう。2期ありきがゆえに、CRYCHIC解散の詳細をこのクール中で明かさなかったのも、作品全体の評価を落とす要因です。

とはいえこれはバンドリというシリーズに囚われているが故の宿命であり、ある種仕方のないことかもしれません。今作が今までのバンドリシリーズとは一線を画す存在感を持った、唯一無二のオリジナル作品であったことは確かでしょうし、一定の評価はされて然るべきだと思います。

 

 

わたしの幸せな結婚 

前半は良かったです。生家で蔑まれて召使い同然の扱いを受けていた美世が、久堂家に嫁入りして妻として認められる中で、徐々に自己肯定感を取り戻して人間として成長していく……。その過程が丁寧に描かれていたので、キャラクターの心情が理解しやすく、成長する様子にしっかりとしたカタルシスを感じられるような物語が構築できていました。当初は強い言葉で非難されたら謝ることしか出来なかった美世が、6話では刃物で脅されている状態でなお、自分自身のいたい場所をはっきり主張できるようになった……。その変化を感慨深く思った記憶があります。

一方で、後半の展開には惜しさがありました。まず6話まででせっかく美世が主体的に動ける基盤を作れていたのに、終盤の展開は受動的で、美世が選択をする場面がほとんどないんですよね。10話では薄刃家当主・薄刃新が、久堂家当主であり美世の夫たる久堂清霞に美世を渡すように迫る場面がありますが、このとき2人の当主は美世に意見を聞くことをせず、美世自身が進んで主張をすることもなく、最終的には決闘で決着をつけることが当主2人の一方的な判断で決まっていました。つまりせっかく6話までで美世自身が主張できる下地を作っていたのに、それを活かさず、自分の主張が出来ないキャラクターに逆戻りしてしまっていたんですよね。これでは成長物語としての主題が一貫せず、何を描きたい作品なのかぼやけてしまいます。

また、今作特有の”異能”設定も、同じように成長物語としての軸をぼやけさせていたように思います。後半からは異能や、異能を用いた怪異退治が作品のメインになっていくのですが、これらは美世を巡って争う男性側に強くかかわる要素であり、美世の成長にはほとんど関係がないんですよね。結果として、後半尺を割いて描いた異能関連の展開が、本筋と上手く結びつかず、主題の描きが停滞していた印象です。

最終的には夢見の力で昏睡状態の清霞を助けに行く流れになるわけですが、6話からここに至るまで、美世の成長は殆ど描かれませんでした。この主題の停滞がどうにも惜しくて、この位置になります。

 

 

総括

全体に不作気味だったのもあって、完走数の少ないクールになりました。そもそも続編もの以外で完走したのがたったの4本ですからね。ダークギャザリングとかHelckとか見ておいた方が良かったかなぁと今になって思ったりしますが……見たとて結局2クールものだから夏アニメの評価には含められないという。

一方で続編は概ね満足のいく出来で、そこに救われた気がします。特に制作体制が一新されて1期のころとは全く違う魅力を持つようになった呪術と、1期ほどではないにしても質の高いアニメーションを送り出してくれた無職の存在は本当に大きかった。夏アニメはこの2作に支えられていたと言っても過言ではないでしょう。

それとMyGO。個人的に何が合わないのか、自分は何に嫌悪感を持つ人間なのかを常に考えながら、世間の評価とのギャップを論理で埋めようと必死にもがく1クールでした。夏クールで一番脳の容量を割いたのはMyGOだったんじゃないかと思うほどです。悩んで悩んで悩んだ末に、最終的にブログ記事に纏めるところまで辿り着けたのはせめてもの救いでした。結局こういう思考は一つの形に出力して区切りをつけないと永遠に終わりが来ないものなので……。

秋アニメの評価は1月内くらいに出せればいいなぁ……とか言いつつまた2月半ばとかに出してたらごめんなさい()

 

*1:ルーデウスがフィギュアが壊されていたことを知って静かに怒る場面

作画オタク目線で選ぶ、2023年秋アニメ期待作

2023年秋アニメの中から、作画に期待できそうな作品を抜粋して紹介します。

  • 内容については考慮しない(作画だけで判断)。
  • TVアニメのみが対象。1クールに満たない作品(『進撃の巨人 The Final Season 完結編』など)、配信のみの作品などは基本除外。
  • スタッフクレジットは作画とデザインに関わるもの以外省略(美術・撮影・音響などは別途公式サイトなど参照を)

 

 

S

葬送のフリーレン

www.youtube.com

監督:斎藤圭一郎
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
デザインワークス:簑島綾香、山﨑絵美、とだま。、長坂慶太、亀澤蘭、松村佳子、高瀬丸
アニメーション制作:マッドハウス

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『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』はエンタメ作品の常識に反している

BanG Dream! It's MyGO!!!!!』がエンタメ作品としていかに異質で、それ故に魅力的であったか。

 

アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」メインビジュアル
©BanG Dream! Project

 

 

  • 序論:”迷子”とは
  • 本論:”迷子”が生む異質さ
    • ① CRYCHICの解散理由が13話まで明かされない
    • ② 言い争いが決着を見ない
    • ③ 謝りそうな場面で謝らない
    • ④ 叱る・注意する大人がいない
    • ⑤ ボケとツッコミの概念が存在しない
    • おまけ:10話は何故高い評価を得たか
  • 結論:つまり『MyGO!!!!!』はエンタメ作品の常識に反している
  • あとがき
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2023年春アニメ 最終評価

2023年春アニメの最終的な評価と感想。

 

評価

SSS:(該当なし)

SS :スキップとローファー 機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2 天国大魔境 ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top ヴィンランド・サガ SEASON2

S+:アイドルマスター シンデレラガールズ U149 【推しの子】 僕の心のヤバイやつ 君は放課後インソムニア BIRDIE WING -Golf Girls' Story- Season2 Dr.STONE NEW WORLD 

S:僕とロボコ 

A:この素晴らしい世界に爆焔を! 鬼滅の刃 刀鍛冶の里編 ワールドダイスター 私の百合はお仕事です! 

B:マッシュル-MASHLE- 地獄楽

C:(該当なし)

 

 

 

SS

スキップとローファー

派手さはなくとも、アニメーションとしての完成度と隙のなさは今期随一でした。作画も演出も、突き抜けて存在感があるわけではないけれど、全てがこの作品を描写するに程よかった。本当に過不足のないアニメだったと思います。

中でも特に良かったのは、キャラクターの描き方。表面上はキラキラしていたり、完璧に見えたり、反対に冴えなかったりしても、どのキャラクターも等しく悩みを抱えていて、嫉妬やすれ違いがあって、全員が等身大の人間として描かれているのが良いんですよね。だから視聴者側も共感しやすくて、キャラクターの目線に自然となれて……その分、一つ一つの感情や言葉に心動かされてしまう。

そしてそんな悩んで迷ってすれ違うキャラクターたちとその関係性を、どこまでも明るく前向きに描き切るスタンスが素晴らしい作品でした。これはもう「岩倉美津未」というキャラクターを作り上げた作者さんの勝利ですね。秀才だけど、どこか抜けていて、でも決してめげない前向きさと気遣いのできる優しさがあって。みつみがいるだけで自然と周りの空気がほぐれて、人間関係がいい方向に進んでいく。ともすればギスギスしがちな青春群像劇を、人間関係の難しさや心の機微を丁寧に描きながらどこまでも前向きで明るい作品に仕上げられているのは、一重にみつみのキャラ造形の素晴らしさに尽きるとすら思います。

本当に良かったし、続きも絶対に面白いだろうと確信できるので、是非2期もやって欲しいところ。お待ちしております。

 

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2

2期単体の評価。1期から通してなら春アニメ1位。

正直批判されるのも分かります。最後は思いっきり駆け足で、様々な対立関係も十二分に解決まで描き切れたとは言えないし、作品としての重厚さにも欠ける。

でもそれ以上にキャラアニメとしてめちゃくちゃ面白かった。キャラ軸でアニメを見る人にとっては最高のエンタメでした。個人的にはそこを評価したいです。現代のエンタメにとって最重要事項である話題性キャラ、その2つをここまでの高次元で兼ね備えたオリジナルアニメが、2クールの間、批判の声一色に染められることも、大失速をかますこともなく、むしろ最後の最後まで盛り上がり続けて一定の賞賛に包まれるような最終回にまで辿り着いた。これを評価しないで何を評価するんだと。

特にキャラの印象の操作が尋常じゃなく上手かったですね。”落として上げる”を繰り返してキャラの二面性を見せながら、1人1人のキャラの好感度を上げていくのが最高に上手かった。最悪の第一印象から始まって、最後は主人公ばりの存在感を見せたグエルを筆頭に、太もも枠と思わせておいて実は有能だったセセリア、嫌な奴と思いきや頼れるスマートさもあったエラン5号などなど……。当初の印象と異なる動きをさせることで、視聴者の興味関心を引く脚本の巧さには目を見張るものがありました。

あとは引きの強さ。毎回のラストに続きが気になる展開をちゃんと持ってこれるのは週1回放送のオリジナルTVアニメとしてこの上ない強みでした。

ひたすらに話題性とキャラの強さに特化して、その勢いのままに走り切った。その現代エンタメとしては無類の強烈さを、自分は評価したいと思います。

 

 

天国大魔境

中途半端なところで終わったのは紛れもなくマイナス要素ですが、まあこればっかりは原作のストックがない以上、物理的に無理だということで許容するしかありません。オリジナルアニメで同じことをやられたら評価を叩き落すところですが、原作ものならまだ割り切りようもあります。

それ以上に作画演出ですよ。これがもうとんでもなく素晴らしかった。作画アニメが頻発するようになった近年のTVアニメの中でも、間違いなくトップクラスのクオリティでしたね。特に8話の藤田春香絵コンテ回、10話の五十嵐海絵コンテ演出回などは、年間ベスト話数の筆頭候補となるようなインパクトの非常に強い話数でした。

脚本も最後こそ尻切れでしたが、道中の面白さには見事なものがありました。謎を広げながら、時に示唆して、時に少しだけ回収していく。2人の旅路を話の軸に置きながら、化け物がうろつく終末世界ならではのホラー展開や、センシティブな話題についても切り込んでいく。物語の目的も明確でブレがなかったですし、だからこそサブエピソード的な単発回も際立っていました。毎回微妙に異なったエンタメが提供され続けていて、飽きを知らない面白さがあったと思います。

総じて1クールで全然終わってないところ以外は完璧なアニメーションなので、流石にこれくらいの評価はしたいところ。できれば同じ面子で2期やって欲しいけど、どうかなぁ……1クールやるだけでとんでもないお金と労力がかかってそうだからなぁ……。

 

 

ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top

これも大概にしてクオリティの化け物でした。とにかく絵が良すぎる演出が良すぎる、それだけで恐ろしいほどの満足感がありました。特にキャラデザの山崎淳さんが自ら総作監を努めた1話、4話のクオリティは凄まじかった。

脚本としては、アヤベさんの落ち込みパートだいぶ長くて悲痛だなぁ……とは思いつつも、全体には満足度の高いお話でした。なんだかんだ史実に基づいたウマ娘のレースは最高に熱いので、よっぽど下手を打たない限りは良作になりますね。

4話という短尺にきちんと相応のドラマを詰め込みながら、豪勢なアニメーションで突き抜けていく、配信アニメという媒体を上手く活かした作品だったと思います。

……見終えてから時間経ちすぎて薄っぺらい感想しか出てこないごめんなさい()

 

 

ヴィンランド・サガ SEASON2

道中、特にアルネイズ関連の話をしている辺りはいまいち入り込めませんでしたが*1、いざ戦争が始まれば流石の面白さで、締めの美しさもあって気付けばSSの評価まで来ていました。流石に1期に比べれば多少劣りますが、地力が違います。人間ドラマとしての圧倒的な筆致の強さと完成度に否応なしに引き込まれる、圧巻のアニメーションがそこにありました。

1期からそうですが、今作は描写に一切の逃げがないんですよね。非道で悲惨な当時の常識も、当時の人々の喜びや悲しみや辛さも、ただただありのままに描き出している。そこに一切の妥協もなければ逃げもない。どれだけ残酷であっても、理不尽であっても、ありのままを描き出すのが今作の残酷さであり、魅力でもあり……。

その点では1期も2期も何ら変わらないですよね。奪う側にせよ、奪われる側にせよ、ただその当時そこにあったであろう人間模様がありのままに描かれていて、だからこそ我々視聴者は引き込まれてしまう。

始まりの地に戻り、新たな目標を誓って再出発するところで綺麗に纏まるラストの美しさも含め、2クール非常に良質なドラマを見せてもらったという満足感がありました。道中の尺の使い方やテンポ感には回によって不満はありますが、全体としては本当に素晴らしい作品でしたね。あの1期から戦争要素を減らしてもなおこれだけのものが出てくるとは思わなかった。恐れ入りました。

 

 

S+

アイドルマスター シンデレラガールズ U149

アニメ視聴後に原作をざっと読んだのですが、感想としては”全然違うことやってたんだなぁ”でした。「既存ファン向けのコンテンツ」として、「お仕事ものとしての側面を強く押し出した」原作とは対照的に、「新規ファン向け」に、「キャラ紹介を最優先事項」として考えたアニメ版。向いている方向が全く違うからこそ、原作ファンの一部からはそれなりの批判も出たのでしょう。

それでもやはりアニメにはアニメの素晴らしさがあったことは間違いなく、そこを前向きに褒めたい自分です。特に作画・演出方面に突き抜けた良さがあったのは誰もが認めるところでしょう。4話(桃華・バンジー)、6話(晴・バックダンサー)、8話(千枝・モデル)、そして満を持したありす回の11話、この4つのエピソードはいずれも作画・演出面に特筆すべき良さのある回でした。

脚本は回によってかなりばらつきがあった印象。流石に小春は叱られるべきだろうと思った7話とか、そこは配信止めてくれよと思った3話とか、褒められたもんじゃないなと思った話数もありましたが、一方で8話みたいなきっちり完成度の高い回もあって結果トントンみたいな。

他だと大人の醜悪さ、特に専務が特別な理由もなしに妨害をし続けていたのは作劇としていまいち好きになれない部分もありましたが、突き抜けている部分があまりにも素晴らしかったので総合的には満足度の高いアニメーションでした。願わくば2期で原作通りのアニメ化も見てみたいですね(原作読んでいても本当にアニメ映えしそうなエピソードがいくつもあったので)。

 

 

【推しの子】

良い意味で刺激的な作品だったなぁと思います。アイを殺した犯人を突き止めるっていう全体の流れを半ば放り投げてまで、芸能界のあれこれを描いているのは多分作者のエゴなんだろうけど、その中にちゃんと毎回視聴者のテンションが上がるような見どころを作れているのが今作の偉いところというか、現代エンタメの覇者足り得たところというか。

例えば恋愛リアリティショーの炎上、例えば自殺未遂、例えばあかねのアイ憑依、例えばB小町の復活ライブ。こういう本筋とは何も関係のないところに見せ場を持ってくるのが、とかく上手い作品なんですよね。全体の流れの中で綿密に計算されて配置されているわけではない、けれど単独で独立して面白い要素を1つ1つ破綻なく繋いでいく、1本の物語の中にねじ込めてしまうのが今作のすごいところなのかなと思ったりはします。

だからそういう意味で完成度は低いんですよね。でも結局それでめちゃくちゃ面白いから、評価をやたらと下げるわけにもいかないという。

あとやっぱりキャラ強すぎですね。この辺りは本当にキャラが大事な現代のエンタメ事情に適合してる。有馬かなの報われないヒロイン感も、黒川あかねの薄幸系ヒロインと見せかけて憑依で豹変してしまうところところも、その2人とアクアの間でバチバチの三角関係がいつの間にか形成されているところも、シンプルに面白すぎるんですよ。そら本筋全然進んでなくても評価しますよねという。そしてキャラが強いということは話の展開に左右されずに面白さが持続しやすいということで、2クール目も楽しみにお待ちしております。

 

 

僕の心のヤバイやつ

ひたすらに出来の良いアニメでした。アニメ1話単位で盛り上がりを作れる脚本、見せ場を見せ場たらしめる演出、作画力、そしてシンプルなキャラの魅力と配役の上手さ。ブコメアニメに必要なものを全て備えていた印象すらあります。

近年のラブコメの中でも、間違いなく最上位クラスの作品でしょう。まあ流石に化け物みたいな作画演出力を武器にぶっちぎった着せ恋と比べちゃうとあれですが、僕ヤバのクオリティもラブコメアニメの中では相当高い部類だったことには間違いありません。

あと上でもちょっと触れたけど配役、特に山田役の羊宮さんのチョイスの良さ。食いしん坊キャラと羊宮さんの声の組み合わせは最強でした。距離が縮まってきてからの囁く声とかもうたまらないですね。ヒロインが魅力的に思えるかどうかは当然ラブコメにとって大事な要素で、その点、山田の天然交じりな可愛さを存分に表現した羊宮さんの声と演技が今作の個人的MVPでした。

若干刺さりが悪かった*2、という程度でこの位置になっていますが、人によってはもっと上でもいいとは思います。というか上の作品がどいつもこいつも作画演出化け物すぎて相対的にこれの存在感が霞むんだよな……普通にめちゃくちゃ出来良いのに…()

 

 

君は放課後インソムニア

多分春アニメの中で一番綺麗に1クールで纏まった作品だと思います。だからそういう意味ではもっと評価して上げても良いくらい……と言いつつさっきと一緒で上が化け物すぎるという話なのですが。

特に告白まで行ったのがまあ偉かったですね。1クールできっちりそこまで辿り着けるアニメは今日日かなり少ないと思うので。1クール単位での纏まりというのは腐っても大事で、綺麗に纏まっていればいるほどいいことに間違いはなく、そういう意味で今作の評価は最終回に尽きる印象すらあります。

また「夜に二人きり」というシチュエーションがごく自然に作れていたのも今作の良い点でしょう。”不眠症”に”星空写真。夜に外に出る動機のあるテーマを主軸に据えることで、男女ペアが二人きりになるという通常の学校生活では起こりづらい状況を上手く実現できていました。ラブコメでありがちな、ハプニングが起こって偶然なってしまった2人きりではなく、成り行き上のナチュラルな展開の中で2人きりのシチュエーションを作れていたところに今作の特筆すべき良さがあったと思います。

そして2人きりというシチュエーションが、”高校生の恋愛もの”という題材の持つ甘酸っぱさをこれ以上なく際立たせるんですよね。夜で周りからも見つかりづらいし、場合によってはそもそも周りに人がいない。そんな邪魔する存在のない環境下で、純粋な高校生の恋愛をたっぷりと味わえる作りには素晴らしいものがありました。

半面減点要素としては、やはり作画でしょうか。動かすことを半ば諦めたような原作再現のスタンスで止め画のクオリティは素晴らしいのですが、一方で動きという点に関してはどうしても物足りなさが否めず。特にこの手のラブコメ手や表情の芝居にいかに効果的に情報を盛り込めるかが原作漫画からの大きな差別化要素になりえると思っているので、そこが物足りなかったのは惜しいかなぁと。ライデンフィルムにそんなこと求めるな?それはそう。

とはいえ、それでもなお良作だったことには間違いないですね。序盤の視聴感からは随分と躍進して、最終回で見事に纏まった良質な青春恋愛作品でした。

 

 

BIRDIE WING -Golf Girls' Story- Season2

2クール目序盤が最高に面白くて、終盤は若干失速。まあでも綺麗に纏まったからいっかー、でこの位置です。

まず序盤、これはもう”ドロドロの親子関係が最高に面白かった”に尽きますね。複雑に絡み合った血縁関係自体の面白さもそうですが、何より張っておいた伏線が回収される面白さがきちんと味わえたのが素晴らしかった。ゴルフ中の描写で示唆されていた親子関係が、具体的なエピソードとともに明かされていく流れには、単純明快な面白さがありました。

その後はほどほど。表ゴルフ編はあまり非現実的なことが出来ない*3ので、突然義手が取れるとかグリーンの上が砂まみれみたいな面白絵面が少なくなってしまったのは仕方ないにしても、敵キャラが揃いも揃ってポッと出だったのは少々残念な感じもします。月の女帝くらい事前に名前出してもらってもいいじゃん?

とはいえその分、葵とイヴの相互関係、それとキャディーとの関係性で魅せてくれたのが大きかったですね。特にキャディーとの関係はすごく良かった。イヴとイチナにせよ、葵と雨音にせよ、当初の想定よりずっと良いコンビになりましたね。特にイチナはいつの間にそんな良いキャラになったんだと驚いてしまうくらい。

1クール目から通してもそれなりに満足感のある、オリアニの中でも十分良作と呼べる部類の作品に仕上がってくれたと思います。1クール目放送前は何も期待してなかったけど、見て良かった。

 

 

Dr.STONE NEW WORLD 

今作は1期の頃から一貫して、小目標の設定がべらぼうに上手いんですよね。目的を達成するために何が必要かを、チャートを交えながら明確にするのがめちゃくちゃ上手い。そしてその目的を達成するまでには当然、大なり小なりの苦労があり、ドラマがあり……それ故に達成したときのカタルシスもまた生まれてくると。こういう小目標とそれを達成したときのカタルシスを、定期的に絶え間なく作れるところが今作の安定した面白さに繋がっていると思います。

それに加えて、過去と現在の繋がりを上手く利用してくるのもまた憎いですね。時空を超えた親子の繋がりが、現状を打破する展開は自然と胸を熱くさせます。

続編も当然織り込み済みで、もう完全に安定したアニメ化ルーティーンに入っているので、あとは最後まできっちりアニメで見せてくれれば十分ですね。本当に安心して見られる作品です。

 

 

S

僕とロボコ

冗談抜きでここ数年のショートアニメの中ではダントツで面白かったです。途轍もないテンポの良さ、詰め込まれたギャグとパロディの勢い絶対に視聴者を不快にさせないキャラ造形。気楽に楽しめる3分ショートアニメとしてこれ以上完成されたものもないでしょう。

今までの経験上、3分ショートアニメは短い尺の中でいかに突き抜けた笑いを提供できるかの勝負だと思っていたので、その点今作は本当に理想的でした。爆速のテンポで強烈なギャグとパロディを不快感なく連発していくスタイルが、3分ショートアニメというフォーマットと完璧にマッチしていて、ニコ動で見るとまあ楽しいんですよこれが。

本当に面白かったので是非色々な人に見てほしいと思います。全28話ですが、それでも1話3分換算で84分、アニメ3話分くらいなので。

 

 

A

この素晴らしい世界に爆焔を!

悪くはなかったと思います。ギャグとしては弱いですが、めぐみんとゆんゆんの友情物語としては、一貫して十分な出来がありました。特に紅魔族の里を出発するところは普通にしんみりさせてくれて良かったですね。あとその前の方にあった、めぐみんのピンチをゆんゆんが助けるところとか。

なんだかんだと友情物語や腐れ縁の関係性には弱い自分なので、そこをきっちりついてくれれば今作の評価もそれなりの範囲には収まります。

あとシンプルに爆裂魔法が見栄えするので、めぐみんがドカンとやる流れだけでそれなりのエンタメにはなるなぁと。本家のようなギャグのキレはなくとも、佳作と評するには十分足り得る作品だったと思います。

 

 

鬼滅の刃 刀鍛冶の里編

内容と映像だけ見ればもっと高い評価をつけたいところですが、テンポが激烈に悪いというだけでこの位置になりました。そりゃまあギャグが寒いとかモノローグが多すぎるとか他にも色々不満はありますが、まともなテンポで作りさえしてくれればまだ評価できる範疇なんですよ。ただこのどうしようもないテンポの悪さは如何せん容認しがたい。1話と最終回が1時間SPと言いながら中身実質30分しかないのとか本当に勘弁して欲しいですね。台詞の間を増やしたり、回想を連発したりで露骨に尺を稼がれて、誰が喜ぶんだって話*4

とは言いつつも、中身は(今までのシリーズと比べれば明らかに劣るとはいえ)そこそこの良さはあり、映像は(多少のパワーダウン感はありつつも)変わらず素晴らしく、そんなぼろくそな評価をつけるほど酷くはないか……ということでこの位置に。ただほんとこのテンポの悪さはダメです。”無駄な引き延ばしはせずに適切なテンポで進行する”。ただその当たり前のことさえやってくれれば、評価できるポテンシャルは十二分にあるので……。

 

 

ワールドダイスター

タイプとしては割と好きな部類の作品でしたが*5、「センス」……ソシャゲ要素すぎて完全に持て余していましたね。せっかく実写の演技をアニメーションに落とし込んでまでリアルな舞台を追求しているのに、センスだけが突き抜けてファンタジーで、周りから浮きまくっているのが非常に勿体ない。しかもこれ見た目じゃ何をしているのか分からないから、いちいちモノローグで解説しないといけないんですよね。それが舞台への没入感を下げるのでまたよろしくないと。

結局「センス」というファンタジー要素から逃れられない*6時点で、リアル方向の舞台は放棄すべきだったと思います。それこそスタァライトみたいな、現実では絶対に無理な舞台演出を取り入れたアニメーションにすべきだった。それをよりにもよってとことん三次元をリスペクトしてやろうみたいなことをやっているからいけないわけですが……。

逆にリアルを放棄、センスを放棄した部分は良かったです。福井洋平さんが絵コンテ・演出を担当された7話、11話は特に実写取り込みに頼らない、アニメならではの舞台の見せ方が出来ていて印象に残っています。最終回、シネスコ枠になってからの舞台も、観客の反応やモノローグを排除して純粋に舞台だけを見せる演出が為されていて、今作初めてまともに没入する経験を味わえました。この辺りはとても良かった。

で、以上を踏まえた上での評価なんですけど、少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の完全下位互換……ですかね。これはもう仕方がないかなぁ……ファンタジー無しで勝負するならともかく、ファンタジー盛り盛りのソシャゲコンテンツでスタァライトに勝つのはまあ無理です。作画演出脚本音楽、全部においてレベルが違いすぎる。ということで良いところもあったし好きなアニメでもあるけど、既存アニメの完全下位互換となればこの位置になるのも致し方なし。

 

 

私の百合はお仕事です!

唐突な自分語りから始まりますが、自分の好みとして本音を曝け出してくれる人に信頼を置きがちなんですね。例えば声優さんだと青山吉能さんとか。ああいう外面も何もなく、自分の黒歴史や恥ですら赤裸々に語ってくれる*7人こそ、真に応援すべき人であり、信ずるべき人であり、人のあるべき姿を体現していると思うわけです。

そこに「外面を作ることは正義」と言って憚らない主人公が出てきて、しかもその思想が作品内で否定されないわけです。それは違うだろうと。外面を作ることが肯定されていいわけがないだろうと。で、この位置になりました。

……とは言いつつ、勿論それだけではないのでもう少し。内容に関しては、最初は”もっとドロドロしていて良かった”、”「職場に恋愛を持ち込む」を現在進行形でやって欲しかった”と書こうとしていたのですが、Wikipediaを見たら原作の続きで本当にそれやってくれているみたいなんですよね。したらもう、それ1クール目でやってくれよ……に尽きるわけですが()前半6話でやってた、ただのすれ違いと勘違いのギスギスなんて、ストレスがかかるばっかりで全然楽しくないですからね。”仕事として百合を演じている”という設定なら、リアルの恋愛を持ち込んで場をかき乱してくれた方が面白いに決まってるんですよ。ということで続きのアニメ化も是非お待ちしております。

アニメとしてはクオリティも良く、全般に整った作りで良好だったと思います。僕ヤバもそうですが、田村ゆかりさんの存在感は令和の時代にも健在であることを再確認させられた作品でもありました。

あとはほんともう2期やってくれと、それだけですね。ポテンシャルは十二分に感じたし、原作既読のフォロワーさんがこの続きが面白いと太鼓判を押していたので。是非ともお待ちしております。

 

 

B

マッシュル-MASHLE-

シュールギャグが好きな人間なので今作のギャグは割と刺さったのですが、バトルを始めた途端に「作画のしょぼいワンパンマン」かつ「魔法にワクワクしないハリーポッター」になりました。終わりです。

そもそも主人公が圧倒的に最強なのに、周りのモブに「気を付けろ」とか「今回ばかりは……」みたいなこと言わせて緊張感が出るわけないんですよ。その時点でシリアスが全然成り立ってない。結局主人公が最強なことを前提に、周りでドラマ作って要所をカッコよくするっていうワンパンマンみたいなことをやらないといけないんだけど、今作にそんなカッコよさは微塵もなく。

魔法バトル部分も、バトルを本職にしている作品に比べれば全然大したことないというか、そもそも主人公が魔法使わないんだから他の人がいくら能力持ってても全部オマケ要素にしかならんだろうということで……。あと後半のヒロイン救出劇自体がどうあがいてもエニエスロビーの劣化っていう。こんな内容ならいっそ潔くロボコみたいにギャグ特化して欲しかったけど、それは原作が許さないだろうなぁ…。予定調和と言わんばかりに発表された2クール目は多分見ます。

 

 

地極楽

このアニメ何がしたいの?が1クール中ずっと付き纏ってた。人間ドラマなのか、ファンタジー冒険譚なのか、バトルロイヤルなのか、よく分からんなぁと思ってたら最終的に能力バトルと来るからなーんだこの作品はと。

多分ですけど今作の場合、作者の頭の中に設定が先にあって、それに合わせて展開を後から作っていっているんですよね。だから伏線も上手く張れないし、展開の一つ一つがその場その場の行き当たりばったりになってしまう。こういうのってどちらかというとサバイバルとかバトルロイヤルに近い作り方だから、むしろその方向性に振り切ってくれればよかったんだけど、今作が選んだのは何故か能力バトルだったというオチ。

能力バトルに入ってからは割と尻上がりに面白くなっていった気がするけど、結局物語の組み立てなんてものは何もないし、ただ行き当たりばったりの物語を見せられても全然内容に入り込めないなぁとなってしまったのでこの位置。あと作画演出が(破綻こそしなかったけれど)終始本当にギリギリだったのも褒められたものではないので……。

 

 

 

総括

非常にレベルの高いクールだった一方で、明確に突き抜けた作品のないクールでもありました。一言で言うなら、”どの作品も1位足り得るけど、誰しもから支持される盤石の1位ではない”クールでしょうか。明確に完璧な作品はなく、どの作品も何かしらの欠点や弱点を抱えていて、それをどれだけ重く見るかで評価の順番が大きく異なるクールだったと思います。

例えば天国大魔境。1クールの完結性を重視するなら評価は下がりますが、自分はそこまで重視しなかったので今期3番手です。例えばU149。回ごとの脚本のばらつきやテーマ設定の違和感に重きを置けば評価は下がるでしょうが、作画演出を軸に見るなら高評価でしょう。例えば君は放課後インソムニア。脚本の纏まりだけで言えば間違いなく今期トップクラスですが、作画演出に物足りなさを感じた自分はあの位置に置きました。

結局上位陣はどの作品もめちゃくちゃ出来が良くてめちゃくちゃ面白くて、そう大した差なんてないんですよね。だから評価基準の微妙な違いが露骨に順位に表れると。

そしてこんなクールはそうない気がします。そもそもこんな数の良作が一同に介することすら滅多にないことですし、その内訳を見てもレベルが非常に高くて、かつ競っている。単純な層の厚さで言えば近年でもトップクラスの、それこそ22年秋クールにすら比肩しうるような化け物クールでしたし、ぼざろのような圧倒的に突き抜けた存在がない*8分、一層カオスで面白いクールだったとも思います。

全部のクールがこうだったらなぁ〜という叶わぬ願いを虚空に放ったところで、今回はここまで。また夏アニメ評価で。

 

 

*1:本筋と関係ないポッと出の奴隷の死に様にどれだけ尺使ってんだという気持ち…あとはシンプルにアルネイズに同情できなかった(自業自得だと思ってしまった)のが大きい

*2:多分この世に今ありふれている1 on 1ラブコメの限界値…これ以上はサブキャラの存在感を増して群像劇みたくするか、月がきれいみたいな純愛人間模様特化型じゃないと評価が難しい

*3:正確には、少なくとも現実でも全く不可能ではない程度の描写に留めていた

*4:特に最終回の回想連発は……わざわざ70分枠とってやることがCM枠増やすための尺稼ぎとか製作側は恥ずかしくないんか

*5:メインキャラに女子しかいない萌え重視の青春群像劇

*6:後にソシャゲ展開が控えているから

*7:青山さんの弁を借りるなら”自分を切り身にして売る”

*8:推しの子や水星の魔女は話題性こそあれ、評価はぼざろほど盤石ではない